グアム政府観光局(GVB)は昨年末の台風、年明け後のイラク戦争、重症急性呼吸器症候群(SARS)の外的要因による日本人旅行需要の減少を回復すべく、リカバリー策に努めている。そうした中で、10月から始まる新年度からは、初心に帰り、グアムのイメージアップを図るためにブランド構築を目指すキャンペーンを展開することを明らかにした。GVBの原代表に、新たな展開を図る日本市場への取り組みについて聞いてみた。



 原代表は2003年度上半期の総括について、「イラク戦争、SARSが一般的には、この業界の一番の危惧だったが、グアムの場合はこれに加えて台風というアクシデントがあり、トータル的には打撃が大きかった」と語る。今年1月から8月までの数字を見ると、グアムへの日本人旅行者はマイナス35%ということで、台風がなくても海外旅行への打撃が大きかった。とくに、日本人の占める割合がグアムは高く、日本人旅客の動向が如実に表れた。
 7〜9月のサマーキャンペーンについて原代表は、「我々も日本人旅行者の回復を期待したが、SARSの影響は大きく、8月も前年比マイナス22%と動きは鈍かった。しかし、9月が現時点で前年比水準まで戻ってきており、数字的には好調だった」と9月を足がかりに10月以降の下半期に期待を寄せる。
 ただ、ホテルの宿泊稼働率を見ると、エコノミークラスは好調だが、ハイグレードのホテルは稼働率が伸び悩んでおり、低価格な旅行商品が主流になっていることが今後の課題といえる。
 一方で、ハワイが航空会社のキャンペーン効果で、夏場は好調に推移している。これについては、過去の事例から、ハワイが良くなれば、全般的に良くなるため、グアムへの相乗効果を期待している。
 グアムでは2001年9月の米国同時多発テロ事件以降、保安・安全対策を強化した。イラク戦争でも、セキュリティについてはとくに安全面を強調したが、やはり海外旅行全般に影響したSARSによる日本人旅行者の減少は、グアムが全く関係ないにもかかわらず、免れることはできなかった。ただ、米国同時多発テロ事件、台風、イラク戦争、SARSの外的要因の影響はあるものの、グアムが保安・安全・衛生面で万全であることは、今後も強調していくことに変わりはない。

現地もイメージ向上へ協力

 旅行業界全般に上半期は、とくにSARSの影響で厳しい状況だったが、それでも9月のグアムの日本人旅客数がが前年水準にまで戻ったことについて原代表は「旅行会社のがんばりが出てきている」と指摘する。航空会社の料金的な政策で、9月は安いということが功を奏していることもあるが、明るい兆しと見ることができる。
 したがって、今後の課題は低価格からの脱却がポイントになる。原代表は「良い意味でのグアムは安いということから脱却していく必要がある」と述べ、「その意味で10月から始まるGVBの新年度であるグアムのブランドイメージを上げる」との方針を示した。このため、2004年度の予算もそれを中心に特化する。TVCM、雑誌の広告を含めて、旅行会社のブローシャの露出用ビジュアル・クリエイティブを一新していこうと動き出しており、2004年度の売り物としてグアムのブランドイメージを上げていく。
 ブランドイメージを上げるためには、現地の協力が不可欠になる。このために、原代表は「ビジュアル的にブランドイメージを上がるとともに、現地のプロダクト自体をそれにインプルーブすることを強く要請している」と述べている。

グアム旅行者が「自然」評価

 ブランドイメージを上げることになった背景には、グアムに対する日本人旅行者との意見交換がある。グアムを体験した旅行者に聞くと、自然を中心にした広告媒体が評価されていたことが分かった。グアムにはショッピングなど多くの魅力があるが、グアムならではの自然をメインに初心に帰り、それを具現化することを今後の戦略として臨むことになった。
 原代表は、「米国同時多発テロ事件、イラク戦争、SARSの影響を受けて、それをリカバリーするための短期策としてキャンペーンを実施してきたが、今後は大きな括りとしてはブランドイメージを上げる必要がある。それが上がってくれば、短期的なキャンペーンを展開しなくても効果が上がる。ブランドイメージを構築することにより、格安な商品=グアムのこれまでのイメージを払拭していきたい」と述べている。

グアムの名所「恋人岬」(写真提供:グアム政府観光局)

「ネイチャー&ヒーリング」

 具体的なブランドイメージ向上について、原代表は「ビジュアル的にグアムのイメージを出していく。とくに、自然を強調する」と述べ、現段階では、「恋人岬」を中心にしてグアムの自然を宣伝展開していくことを検討している。
 グアムと言えば海のイメージがあるが、海と山のコンビネーション、3時間で日本から行けるイメージ、日常から脱出する意味合いのビジュアル創出していく方針。
 今後、いくつかのカテゴリーを最終的にピックアップしていくが、自然中心となることは間違いないようだ。
 このプロモーションをいつから始めるかだが、新年度の10月1日から始めるのが理想だが、現在、どういうタイミングで実施するかを検討中だ。10月のJATA旅行博で最終的に出したいとしており、キーワードは「ネイチャー&ヒーリング」になると見られる。

中部市場の成長に期待

 コンチネンタル航空が下期から関空−グアム線の運休を決めるなど厳しい状況が続いているが、原代表は「運休で席がなくなるというのは、非常に厳しい。エアラインも企業であるからには、収益を考えれば仕方がない面もあるが、近い将来、再開してほしいと思っている」と述べた。
 コンチネンタル航空は地方からのグアム路線については、継続運航を決めている。原代表をこれを評価するとともに、定期便を運航維持することが最も重要であり、GVBとしても地方自治体に対して、定期便の存続のために協力していくことを強調した。
 ただ、関西市場については経済が低迷していることもあるが、思っていた以上に商圏自体が狭かったと認識している。関西では、航空機のファースト、ビジネスクラスの利用が低く、これがエアラインの収益低下に結びついている。関西地区には大企業も多いが、景気悪化が最も価格に反映する土地柄とはいえ、関西の海外旅行市場の活性化は景気回復が最も重要といえる。
 これに対して、中部地区について原代表は、「思ったよりも商圏が広いと感じている。価格自体も安くはなっているが、それほど崩れてはいない。まだまだビジネスは広がる」と今後に期待を寄せる。
 2005年には中部国際空港も開港し、今後の商圏の広がりを考えると、中部地区の旅行需要は伸びていくと予想される。

初の団体旅行サポート実施

 GVBは10月初めから12月20日まで、「イベントサポートキャンペーン」を実施中だ。これは、オルガナイザー向けのキャンペーンで、現地でのイベントの実施を支援する。具体的には、現地での食事、パーティなどに関わる費用をサポートする。旅行会社経由でその仕込みを行い、オルガナイザーの経費を少しても軽減しようというのが狙いだ。
 原代表によると、インセンティブ、社員旅行に関わる旅行での費用をサポートすることが今回のキャンペーンの主旨。米国同時多発テロ事件以降、どこのデスティネーションでも団体需要が非常に落ちている。グアムも全体の30%強が団体で占めており、グアムに団体を戻すために、今回のキャンペーンを初めて実施した。
 原代表は、「これまでは、グループ割引など個人向けのキャンペーンが中心だったが、実際に予算を持っているのははオルガナイザーであり、こうしたキャンペーンは一つのキーポイントになると思う」と述べた。
 GVBでは、毎年恒例として、ビッグサマー・フェスティバルを実施しているが、来年をこれをどうするかについて原代表は「今までのような個人向けのキャンペーンをどう展開するかは、今後の課題だが、ファミリー向けのビッグサマー・フェスティバルは、そのまま引き続き実施していこうとは思っている。予算が限られている中で、いくつもできないが、方向性はグループ対応とブランドイメージ向上が中心になる」と述べた。

スポーツアクティビティ充実

 2004年度の顧客層のターゲットは、第1グループがファミリー、団体(企業グループ)、フィメール(旧OL)の3つ。第2グループがウェディング、シルバー、スポーツアクティビティの3つ。トータルで6つの顧客マーケットに対して、フォーカスしていく計画だ。
 この中で、スポーツアクティビティは今後注目の市場になる。先の世界選手権に出場した水泳日本代表がSARSの時にレオパレスに合宿に来ており、秋も同様に合宿が予定されている。レオパレスには50mプールが二つ並んでおり、これはアジア地域ではグアムしかない。このため、日本だけでなく、アジア各国からも水泳の練習でグアムが脚光を浴びることが予想される。
 また、2月にはサッカー、J2リーグの湘南ベルマーレがグアムで合宿を行い、来年度も2〜3チームが合宿を予定している。こうした実績を積み重ねることで、グアムのスポーツアクティビティがさらに注目されてくる。今後、グアムのスポーツ施設が充実してくることに伴い、スポーツアクティビティが大きな市場になることが期待される。

熟年市場・FITも強化

 熟年・シルバー層については、「ロマンスグアム」の名目で過去実施してきて、引き続きターゲットとしてフォーカスしていくが、キャンペーン自体をどう展開していくかは、今後の検討課題となる。ただ、イメージキャンペーンを行うために旅行者から意見を聞いたところでは、60歳以上の女性はグアムに好印象を持っている。話の中で、グアムは若者の島と思っていたが、実際に行ってみると、熟年にも非常に良い島という感想を持っている人が多かった。
 このため、原代表は「地方を巻き込んで、シニア向けのモニターツアーなどを実施できればと思っている。以前のイメージとは違うというグアムを現実的に見ていただきたい。熟年・シルバー層に対する目標ができたと思っている」と述べた。
 FITについては、グアムでは徐々にではあるが、シェアも10%前後まで伸びてきているという。FITは航空会社の運賃政策と連動する。最近はミクロネシア向けにPEX運賃などを航空会社が発表しており、これが定着してくれば、FITはさらに伸びてくることが予想される。
 原代表は「FITがリピーターとなって、高いレベルの旅行を楽しんでいることもあり、今後とも我々もウェブ上などで、FITを促進していきたい」と述べている。と思う。
 10月のJATA世界旅行博にはカマチョ知事を始め、グアム観光ミッションが来日し、セミナーを都内で開催することを予定している。そこで、新しいグアムのブランドイメージ向上の施策が打ち出されることを期待したい。