財団法人世界青少年交流協会は、海外派遣事業の一環として、7月30日b8月8日の期間、少年少女自然体験交流事業〜ミクロネシア諸島自然体験〜を実施し、多くの少年少女がグアムとミクロネシアの島々を訪れた。同事業は、子供たちの自然体験活動の充実を目的として行っているもの。美しい島々に囲まれ独自の文化を生み出し、また日本との交流の歴史があるミクロネシア諸島において、自然、異文化、同世代の子供たちとの交流などの体験活動を行い、自然のすばらしさ、共存することの大切さを学ぶ機会を子供たちに提供している。
 プログラムは、チューク団、ポンペイ団、ヤップ団、コスラエ団、パラオ団の5コースに分かれ、それぞれが各島を訪れて体験活動を行ったが、各コースとも共通訪問地としてグアムを訪れている。グアムでは、ミクロネシアの自然、文化についての講義が行われた。最終目的地に着く前に、グアムで講義が行われたことで、より深くミクロネシアの文化を知ることができたとして好評であった。

2002年事業ではガダオ洞窟の壁画を見学

 また、同事業は2002年夏にも実施されており、2002年の事業では、「グアムにおける歴史・自然学習」として、「ガダオ洞窟」の壁画を見学し、歴史を学ぶ機会を設けた。ガダオ洞窟の壁画は、古代チャモロ人によって描かれたもの。ガダオ洞窟は、通常では入ることができない場所で、グアム大学の特別な配慮により実現した。 その際、ただ見るだけではなく、説明つきであったため、子供たちからは、「楽しく学ぶことができた」「よく理解ができた」などの声が寄せられ、好評であった。
 なお、それ以前にも世界青少年交流協会は、「ジュニアサイエンスクルーズ」として、グアムに船を派遣した実績がある。その際は、遺跡、ハマモトフルーツ園、アトランティスサブマリンの乗船などを体験している。
 世界青少年交流協会は、今後もミクロネシア諸島自然体験を実施していく意向で、これまでのように、ミクロネシア諸島へのゲートウェイとして
グアムも訪問したいとしている。グアム大学が、ミクロネシア研究の最高機関であるため、グアムでミクロネシア文化を学習することは大変有益としている。合わせて、グアムでのプログラムについても、拡充することを検討しているという。



 少年少女自然体験交流事業〜ミクロネシア諸島自然体験〜を担当した世界青少年交流協会事業課長の中川原徹氏は、「開発されていない自然も多く自然体験に適している。また、文化体験の素材も豊富」とグアムを評している。しかし、一方で、「これまで、ジュニアサイエンスクルーズなどを実施してきたが、その際には“レジャーアイランド”という固定観念が壁となり、教育面でグアムを訪れることをなかなか理解してもらえなかった経験がある」と語る。今後は、いかにこの点を改善していくかが、グアムの教育マーケットの鍵となるのではないか。
 中川原氏は、教育面におけるグアムの素材として、「グアム大学の活用」を挙げ、「グアム大学はミクロネシア研究の権威で、研究設備も整っている。グアム大学との交流は、良い学習機会となる」と語る。さらには、「ホテルでの宿泊も良いが、大学の寮などが使えるとより良いのでは」と、宿泊での利用も提案している。さらには、グアムにおいて、プラネタリウムを利用した天体観測などを素材としてあげて、「インフラが整っているのだから、教育面でもっと積極的に利用すべきではないか」と語っている。
 では、“レジャーアイランド”という固定観念をうち破るにはいかにすべきか。この問題については、業界全体で、グアムにも教育的な要素がいっぱいであることをアピールしていく必要があるだろう。これまで、ビーチリゾート、健康、スポーツ、ショッピングといったイメージの露出は続けられてきたが、それについては既に定着をしており、一定の成功を収めている。今後、さらに発展させるには、次のステップに進むべきではないだろうか。その一つの方向として、グアム本来の魅力を見直し、教育的な要素を前面に出していくことを提案したい。
 また、現地の高校生や大学生は、将来的に何らかの形で日本と関わる機会が多いため、日本の文化に興味を持っており、交流を希望している。このため、若者同士の交流の場を作っていくことも重要となってくるだろう。



 「これまで、島外で生まれたコンセプトを導入することで観光産業の発展を図ってきたが、施設が十分整った現状で、今後さらに発展するには新たな概念を導入すべきだ。それには、自然や歴史・文化といった、これまであまり省みられていなかった“グアム固有の魅力”を見直すことが良いのでは」といった声が多く聞かれる。それでは、実際にグアムの自然、歴史・文化にはどういった魅力があるのだろうか。また、観光に反映させるにはどういった方法があるのだろうか。ここでは、グアムの自然、歴史・文化を取り上げて、考察してみたい。

ラッテストーンなどチャモロ文化を体験

 古代チャモロ人がグアム島を含むマリアナ諸島にやってきたのは、今から約3500年前の紀元前約1500年。フィリピンやインドネシアなど東南アジア方面からやってきたと推察されている。古代チャモロ文化を代表的するものとして「ラッテストーン」が挙げられる。ラッテストーンは、先史時代に太平洋で栄えた巨石文化の遺構の一つ。ラッテストーン公園なども整備され、観光客も身近に見学できるが、チャモロの人たちは、今でもラッテストーンには「タオタオモナ」と呼ばれる祖先の霊が住んでいると信じて、決して近寄ろうとしないことが、ミステリーを増幅させている。ラッテストーンが、何のために、どのような目的で建造されたのかは、学者によっても、墓地説、祭祀場説、家屋の礎石説など、様々な説が挙げられている。しかしながら、近年になり、詳細な分析により、ラッテストーンは、家屋の礎石であったことが明確になってきている。
 ラッテストーンはそのほとんどが海岸沿いで発見されており、タモン湾のホテルエリアでも見つかっている。特に、タモン湾の南部にあるイパオビーチは、最古の村の一つがあった場所と見られており、ラッテストーンを始め多くの遺物が発見された。イパオビーチパークの整備計画が以前より挙がっているが、ラッテストーンを始めとした古代チャモロ文化を本格的に紹介する施設として整備してはどうだろうか。
 また、タロイモや米、ブレッドフルーツ(パンの実)を主食としていた古代チャモロの食生活だが、調理については、家屋の裏に台所が作られ、屋外で調理していたと見られる。これは、グアムの人気メニュー「バーベキュー」の走りといえる。バーベキューを“由緒あるチャモロ料理”としてアピールすると、その魅力に深みが増すだろう。

自然素材を利用したバイオロジー・プログラム

 700万年前、火山の爆発によって生まれたグアムは、長い年月をかけて地盤の隆起を繰り返しながら石灰岩の崖、赤土の砂漠やダイナミックな滝、数々の洞窟、ジャングルを流れる小川、美しい山々といったさまざまな景観を造りあげた。また、グアムの海中には、1万8000年前から堆積したと推定されるサンゴ礁、ハワイの約2倍の400種類のサンゴ、200種類の藻類、約800種類もの魚類が生息する。これらの海、ジャングル、動植物といった自然素材を利用することで、バイオロジーまたはエコロジー面でのプログラム設定が可能だ。
 特に注目したいのが、グアムの70%以上覆うジャングルの存在。植生を教育プログラム化する際には、グアムのいたるところに広がっているジャングルは、重要な題材となる。そこでは、植物学として「通常ジャングルと呼ばれる林が、大型の葉を持った常緑広葉樹の林からなっている」こと、気象学として「常緑広葉樹林が発達するのは、熱帯性海洋気候で、気温の変動は少なく、乾季と雨季に分かれており、年間平均気温は約28℃、年間平均雨量は2000mm前後、平均湿度は約72%という気象条件による」こと、地理学として「大陸から離れているという地理的条件」などを学ぶことができる。また、日本人の旅行の一形態として認知されてきた「トレッキング」を通じて、ジャングルを体験するのも良い方法だ。
 さらに、グアムのジャングルは、元日本陸軍軍曹の横井庄一さんが、1944年8月の日本軍玉砕以来、28年間を過ごしたこともあり、歴史素材としても注目される。横井さんが自ら掘った“靴下型”の洞穴、マンゴーなどの果物と、芋などの根菜類、ヤシガニ、エビなどを採取していた食生活、ココナッツの殻で食器を作ったり、マンゴの葉をたたいてつくった繊維で織物を作っていたことなど、学ぶことは多い。
 一方、グアムの海については、前述の通り、400種類のサンゴ、200種類の藻類、約800種類の魚類を解説しながら、マリン・バイオロジーのプログラムを設定することができる。エコロジー面では、海だけでなく、「グアムの海の美しさは、ジャングルや森といった陸の自然があってこそ成り立っている」ことを紹介する必要がある。海岸沿いの植物はそれぞれに役割があり、それによって海岸の地形や地質が保たれていることを理解してもらい、環境保護への関心を高める機会としたい。