2003年7月13日から27日にかけて、スペイン・バルセロナで開催された世界水泳選手権。7月20日から始まった競泳部門では、北島康介選手が男子平泳ぎ100メートルおよび200メートルをともに世界新記録で制して2つの金メダルを獲得したのを始め、日本代表選手のメダルラッシュが注目された。その日本代表チームが、世界選手権に向けての直前合宿をグアムで行った。このことは、TV番組の北島選手特集で合宿風景が放映されたこともあり、世界選手権での活躍とともに、グアムのスポーツ合宿市場が全国的に認知される機会となった。
 そこで、本紙では、財団法人日本水泳連盟競泳委員会の日本代表ヘッドコーチである上野広治氏に、グアム合宿について、グアムを合宿地に選んだ理由などを伺ってみた。

bb合宿の目的は

 7月にバルセロナで開催された世界水泳選手権に向けてのもので、5月5日b11日に行いました。4月の末に代表選手が選考されて、1週間後の実施で、世界選手権に向けての調整と、チームづくりのためという目的がありました。

bbこれまで海外で合宿を行ったことは

 基本的に海外での合宿の場合は、山の上に登るような高地トレーニングとして、または大会直前の現地合宿といった形で行ってきましたが、今回のような目的での合宿を海外で行ったのは初めてです。

bbグアムを合宿地に選択した理由は

 まず「近さ」が、選択理由の一つです。グアムは、海外といっても3時間半の距離ですから。
 そして、一番の問題はプール。プールの条件が一番重要になります。合宿のレベルが高くなってくると、選手個々の練習も必要になり、どうしても多数のコースを使用せざるを得ません。なお、日本代表チームは、この11月にも、今度は2004年アテネオリンピックへ向けての強化で、グアム合宿を行う予定です。これまで、冬場の合宿は、沖縄の那覇を拠点として行ってきたのですが、これまで、那覇を合宿地としてきたのは、50メートルのプールが2面あるからでした。しかし、コース数は、片方が5コースで、もう一方が6コースなので、十分ではなかった。
 その点、グアムは、10コースの50メートルプールが2面、それも平行してあるという環境であるので、十分に条件を満たしています。世界的にも、これほどの環境が整ったプールは見たことがありません。加えて、沖縄と比べて、グアムは飛行時間も、気候時間も変わらないことも決め手になりました。
 また、グアムへは全国の主要都市からもフライトがあります。これまで、一旦、成田に集合してから合宿に行っていましたが、11月の合宿から、成田に集合せず、それぞれの都市から直接グアムに向かうようにする予定です。東京と地方との往復を考えると、その負担は大きく、これは大きなメリットとなります。

bbグアムの場合、屋外のプールですが、それについてはどのような影響がありますか

 国内でオリンピック代表選手の選考を行うのは、辰巳の国際水泳場ですが、ここは世界で一番泳ぎやすい条件が整っているといわれます。しかし、本番に向けては、風が吹いた状態などでの練習が必要となります。特にアテネオリンピック対策としては。5月から選手には、「グアムではアテネと同じように風が吹く。ここで泳ぐことがアテネと泳ぐことと一致する」と言い続けてきました。
 また、「暑さ」対策という意味でも、グアムは適しています。

bbそのほかの施設については

 ウェートトレーニング場が、プールのすぐ近くにあることは嬉しいです。宿泊施設については、コンドミニアムを使用しましたが、共有できる空間があるのが良いと思います。合宿は、どうしても沈滞ムードになりがち。それに対して、選手がいろいろと部屋を移動することで、和やかにできる空間を形成でき、きつい練習による精神の緊張状態を和らげる効果がありました。
 また、グアムが南の島のリゾート地ということも、選手の緊張を緩和するのに効果がありました。開放感があることなどにより、選手同士、または選手とコーチとのコミュニケーションも上手く取れます。国内では得られない効果でしょう。

bb食事面については

 栄養のバランスも含めて、食事内容は選手に評判が良かったです。事前にメニューのやり取りはしましたが、やはり、合宿中には選手の要望もでてくる。これについても配慮してもらえ、安心して合宿ができました。また、練習が終わったらすぐに食べられるのが条件的に良かったです。バイキング形式で、何時来ても食べられるというのが、選手、コーチのペースを乱さず練習を消化できるという点で、非常に効率が良かったと思います。

bb練習が休みの時はどのように過ごされたのでしょうか

 休みの日は、選手のほとんどが海に行きました。また、ショッピングなどをしてリラックスできたようです。なお、海外で合宿する場合、管理面から、治安が心配ですが、グアムであれば問題はありません。コーチ陣についても、コミュニケーションの場が必要で、ゴルフなどをしながらコミュニケーションをとることができました。

bb先程、11月の合宿の話題がでましたが、今後の合宿予定については

 11月10日b18日、来年のアテネオリンピックへ向けて、選手・コーチ合わせて100名程の合宿を行い、その後、12月12日b20日、2月12日b20日も予定しています。
 さらに、各選手の所属クラブが、その間を狙ってグアムで合宿を行うもようで、おそらく、この冬場は、競泳関係者ほとんどが、グアムに拠点を張っている状態になるでしょう。
 日本代表が泳ぐことで、グアムのプールが、ステータスを持つようになってくれれば良いと思います。ステータスが上がることによって、ジュニアの大会や、マスターズの大会などが開催されるようになるのではないでしょうか。
 また、アメリカ合衆国の公認や、日本の公認プールとして認められるよう申請をしているので、後々、アメリカ本土、オーストラリアなどが参加して、環太平洋クラスの大会がグアムを拠点に開かれる可能性もあり、海外との合同合宿もあるでしょう。



 レオパレスリゾート・グアムが大規模リノベーションを行い、野球場、ソフトボール場、400mトラック付き総合グラウンド、競泳用公式プール(50m×2面)などのスポーツ施設をオープンさせたことで、グアムの「スポーツ合宿マーケット」が成長した。移動の距離が短いことおよび時差が殆どないことで日程を有効に利用できること、1年中気候が良いこと、さらに宿泊施設が整っていることなど、グアムは多くの利点を有しており、かつては、読売ジャイアンツのキャンプが行われ、サッカーでも、シーズンオフ、Jリーグのシーズン中断期などに訪れトレーニングを行うJリーガーがいるなど、元々注目されていた。これに、充実したスポーツ施設が整備されたことで、マーケットが成長したと分析する。
 グアムのスポーツ合宿マーケットの特徴としては、プロチームや日本代表クラスの合宿が多いことだ。2003年に入って、2月にサッカーJリーグの湘南ベルマーレがキャンプを行い、5月には、競泳の日本代表チームが、7月にバルセロナで行われた水泳世界選手権へ向けた合宿を行っている。これらの合宿は、メディアを通じて世間一般に露出する機会が多く、これによりスポーツ合宿マーケットとしてのグアムのグレードも高まる。ステイタスが高まることにより、企業のクラブ、学生の連盟等の合宿も誘引されると思われ、マーケットがさらに拡大する可能性は大きい。
 今後も、競泳の日本代表チームが、2004年のアテネオリンピックに向けて、11月、12月、2004年2月とそれぞれ1週間程度の合宿を予定している。また、その合間を縫って、各選手の所属クラブがグアムで合宿を行うもよう。また、アテネオリンピックに向けて、日本女子ソフトボールチームの合宿も予定されている。そのほか、プロチーム、大学の水泳部、アマチュアのサッカーチームといった合宿も入ってきており、今後ますますグアムのスポーツ合宿マーケットが成長していくだろう。