9.11、台風、SARSと逆風が吹き荒れた時期を乗り越え、昨年終盤からグアムの旅行需要は確実に回復に向かっている。個人のレジャーマーケットだけでなく、団体旅行も回復しており、ここへきて伸びが加速している。グアム政府観光局(GVB)も団体旅行キャンペーンを実施するなど、修学旅行を含む団体マーケットの需要拡大に積極的に取り組んでおり、団体旅行の伸びは今後さらに勢いづいていくものと期待される。

需要回復軌道に乗ったグアム

 グアムを訪れる日本人旅行者数は、2000年は100万人を超えていたが、9.11テロ事件があった2001年は90万人に落ち込み、事件の影響が残った02年も約79万人と振るわなかった。さらに02年の年末には大型台風がグアムを襲い、その傷も癒えない03年春には今度はSARSが海外旅行マーケットを直撃。ダブルパンチとなった03年は日本人旅行者数がついに66万人まで減少した。しかし、03年11月に前年割れから脱すると、以降は着実に回復軌道に乗った。その結果、グアムを訪れた日本人旅行者数は04年1〜7月は累計51万3000人となった。これは03年同期比では実に70%増、02年同期比でも12%増の数字である。8月も好調さは続き、1日3000人超が訪れた日もあり、月間では8万5000人に達したものと推計される。
需要回復を支える一つの要因がチャーターフライト。全日空は8月から、羽田を毎日出発するチャーターフライトを運航しており、関東地区からの旅行者に関して8月だけでも6000名以上の増加効果がある。コンチネンタル航空も8月に8便のチャーターフライトを広島から運航しており、夏の旅行者増加を後押しした。
このまま行けば04年は01年レベルまで回復し、年間日本人旅行者数も90万人に迫るものと思われる。

団体旅行の需要回復も加速

特に4月以降の団体旅行の回復ぶりには目を見はるものがあり、グアム政府観光局によれば8月までの団体旅行は前年同期比300%以上とのこと。ここまで団体旅行の好調さを支えてきたのは15名ないしはそれより少しサイズの大きい中小規模の団体だった。しかし秋から冬にかけては団体の大型化も期待できそうだ。実際に最近では500名以上の大型団体旅行に関するGVBへの問い合わせも増加しているという。また修学旅行に関する問い合わせや、修学旅行決定の学校数も順調に増えている。
大型団体旅行需要や修学旅行が本格的に回復すれば、他のオーガナイザーへの宣伝効果も期待できる。この種の旅行は、多少なりとも横並び意識が働き、他に追随するケースもある。有名企業のインセンティブは他企業のインセンティブを呼び込む要素になるし、修学旅行の実施件数が増えれば増えるほど、他の学校がグアム修学旅行に踏み切る際の決断を後押しする効果が働く。
 しかし、GVBは05年105万人を目標に掲げており、これを達成して100万人台の大台を回復するには、旅行者数全体に対する団体旅行の比率をさらに35%まで引き上げる必要があると見ている。さらなる団体旅行の成長を促さねばならないわけだ。
基本的に個人の責任において実施される個人のレジャー旅行と違い、トラブルがあればオーガナイザーにも責任問題が波及しかねないインセンティブ旅行や、学校の判断が問われかねない修学旅行などの団体旅行は、テロ事件や病気騒動などには敏感に反応し回復も遅い。これはデスティネーションを問わず共通の傾向である。このためグアムでも9.11テロ事件やSARSなどの後には、個人のレジャー旅行と比べて回復のペースが遅れ、一時期、団体旅行が全体の2割以下に落ち込んだこともある。その後、だいぶ状況が変わったとは言え団体旅行の比率は現在でもまだ3割程度と考えられる。GVBが目途とする35%にはまだ差があるわけだ。

社員旅行や修学旅行のサポートキャンペーンも

 そこでGVBは今秋から団体旅行キャンペーンを実施する。GVBではこれまでも同種のキャンペーンを行ってきたが、今回から新たに修学旅行もキャンペーンの対象とし、インセンティブ旅行、職場旅行、修学旅行など全ての団体旅行の底上げを図る考えだ。またGVBとして、景気動向や経済状況をにらみながら、市場に合った団体旅行企画の提案に取り組む。さらに団体旅行支店へのセールスコールを強化。旅行会社が支店内で社員向け団体旅行セミナーなどを実施する場合には積極的にスタッフを派遣する方針だ。団体旅行者が現地で楽しめそうなプログラムのアイデアも旅行会社に提供する用意をしている。具体的には今年のグアム観光プロモーションのテーマでもある「グアムの歴史や文化」を意識し、「ヤシの木の植樹」や「自然美化活動とビーチ清掃」など一味違ったグアム体験をプログラム化していく予定だ。





4つの条件を比較して選んだグアム

 尼崎市立尼崎産業高校は、今年3月に3泊4日のグアム修学旅行を実施した。同市の市立高校として初めての海外修学旅行であり、目的地の選定には特に慎重を期した。数ある候補地の中からグアムを選んだ理由について同校は@費用AアクセスB英語C治安の4点を挙げた。グアムはこの4点を吟味した結果、目的地として最もふさわしいと判断されたわけだ。
 費用については、国内修学旅行予算は8万円程度という兵庫県の規定があり、海外修学旅行の場合も国内修学旅行予算の3割増程度という目安がある。まずはこの予算の範囲内で候補地を絞り込んだ。この時点ではハワイなども候補地として残っている。
 しかし、アクセスを比較するとグアムが有利だ。6〜7時間かかるハワイに比べグアムなら3〜3.5時間と短く、時差が1時間で体にも優しいとのアドバンテージがある。「アクセス面でいえば、北海道や沖縄への国内修学旅行とあまり変わらない感覚で海外修学旅行が実施できる、安心できた」(尼崎産業高校学年総務・守時康雄教諭)というわけだ。また英語圏であるため、語学に関する教育効果が得られるのも魅力の一つだったという。さらに修学旅行で最も重要な治安や衛生面については「事前に下見を行い、十分にチェックした結果、グアムであれば大丈夫との確信を得ることができた」(同)としている。同時に受け入れ態勢についても、190名以上の生徒数を受け入れるのにも十分な施設やシステムがあることを下見段階で確認している。これらの諸条件の比較と下見での最終チェックを経て、グアムが同校の海外修学旅行目的地として最適と判断された。

現地校を滞在ホテルに招き交流

 同校初の、そして尼崎市立の高校として初の海外修学旅行は大成功となった。成功の要因について同校は現地の高校生との交流を工夫した点だったと振り返る。「現地のハイスクールとの交流は他の高校も行っていますが、大部分が現地の高校を訪ねるスタイル。授業見学や参観をするわけです。しかし我々は他校とは違う交流ができないか考えることにしました」(守時教諭)。そうして様々なアイデアを検討した結果、一般的な交流とは逆に、現地のハイスクールの生徒たちを滞在ホテルに招いて交流会を催すことにした。また交流のための仕掛けとしては言葉の壁を乗り越えやすい題材として音楽とスポーツを取り上げた。具体的には音楽についてはフォークダンス、スポーツについてはボーリングを行うことになった。フォークダンスについては、音楽好きの教員や生徒が力をあわせてレゲエ調の音楽とオリジナルなアレンジのフォークダンスを用意した。
 ボーリングを取り上げたのは、スポーツとして比較的ポピュラーで、ルールが簡単、さらに体力差だけでは勝負が付かない娯楽性のあるのが理由。しかし最大の理由は滞在ホテルのレオパレスリゾートにボーリング場が併設されていたことだった。
 この交流スタイルが結果的に生徒たちに強烈な印象を与えた。「生徒からは『フォークダンスを踊るだけで言葉の違いを乗り越え、お互いに楽しみ笑い合えることを知ることができ、素晴らしいことだと感じた』といった声が多数寄せられた。ボーリング場で日本とグアムの生徒同士が笑顔でハイタッチを交わす光景も見ることができた。準備には苦労しましたが、期待していた以上の交流効果があったと思います」と守時教諭が振り返る。
 実は斬新な交流スタイルに当初は現地のハイスクール側には戸惑いもあったという。しかし、結果的にハイスクールの生徒たちにも尼崎産業高校との交流は非常に好評で、同校の帰国の際にはハイスクールから「あのような素晴らしい交流ができるなら、今後もぜひ交流を続けたい」とのメッセージが寄せられた。

現地での生活体験や自然体験も盛り込む

 もう一つの工夫は現地での生活体験。グアム2日目の夜は生徒たちが自炊で食事を作った。これはキッチン付きのコンドミニアム・タイプの部屋を用意できたから実現したプログラムだ。まずは生徒同士で献立を考え、現地スーパーに買い物に出かけた。食材を買い求める流れの中で、現地の生活を肌で感じ、ドルを使った買い物という社会体験も可能になった。
 滞在3日目はグアムの自然を満喫した。修学旅行ではあまり使われない東海岸のイパンビーチを舞台に、複数のプログラムを用意。生徒193名を5つのグループに分け、ジャングルクルーズやビーチバレー、水牛車での観光、ヤシ葉の帽子作り教室など複数のプログラムを順番に体験させた。滞在最終日で帰国日の4日目は、最後のお土産物ショッピングを兼ねてマイクロネシアモールを見学。昼食はフードコートで生徒自らがドルを使って好きな料理を楽しんだ。
 グアム修学旅行は参加した生徒たちだけでなく父兄の間でも評判となるほどだった。「『修学旅行に行っただけで子供が随分と大人になって帰ってきた』や『子供が非常に満足して帰ってきたようで父兄としても非常に嬉しい』といった声が学校に届けられました」(守時教諭)という。
 こうした好評を受けて、尼崎産業高校では06年にもグアム修学旅行を予定しており、すでに今年8月に下見も行っている。同校では「今後もグアム修学旅行や現地ハイスクールとの交流を続けていきたい。それがいずれ何らかの形で尼崎市とグアムとの交流などにも発展してくれることも期待したいですね」(同)と夢を膨らませている。





今年も11月にグアム社員旅行を予定

 都内の広告代理店、サイバーブロードキャスティングシステムズ社(CBS)は昨年、グアム社員旅行を実施した。社員旅行は毎年実施しているが、グアム社員旅行は昨年が2回目と、すっかりグアムがお気に入りといったところだ。CBSがグアムを目的地に選んだ最大の理由は「グアム社員旅行となれば、海外旅行ということで気分を切り替えられる効果があるにもかかわらず、実際には距離が近く、週末を利用すれば翌週の月曜には帰ってこられる手軽さが一番大きかった」(CBS坂井和彦社長)という。もちろん、近くて滞在期間を短くできる結果、コストを抑えられるメリットがあったのも、有力な動機のひとつになっている。また2回目の社員旅行の際には、最初にグアム社員旅行を実施した経験から、時差がなく身体的にも楽であったことが、選択理由に加わっている。他のデスティネーションと比較した場合のグアムの特徴である“安・近・短”が全て社員旅行の魅力としてぴたりと“ハマった”わけである。
 肝心の社員旅行の成果について坂井社長は「社員はみな毎日一生懸命に仕事に励んでくれています。ですから年に1回の社員旅行では十分にリフレッシュしてもらいたい。グアムで皆が楽しそうにしている姿を見て、たいへん嬉しく思う」と満足顔だ。すでに2回のグアム社員旅行を実施したが、社員旅行目的地としてのグアムの好条件やさまざまな魅力を上回る候補地が見つからないこともあって、11月に予定している今年の社員旅行もグアムに決定。3回目のグアム社員旅行となる予定だ。
中見出し)フリータイム重視でも充実の時間
 2泊3日で実施した昨年の社員旅行は、基本的にはフリータイム重視。全員が集まるのは夕食の時くらいだったが、逆にそれぞれのフリータイム中の話題が尽きず、翌日のための情報交換などでも盛り上がった。夕食はブッフェ形式を選んだが、ワイワイと賑やかな夕食を楽しむためには最適だったようだ。ブッフェの内容も社員には好評で、種類も量も十分で味も良かったと文句なし。「若い社員が多いので、食べる量も多いのでブッフェで正解。デザートのケーキを何個も食べて喜んでいる社員もいました。たっぷり食べておいしい思いをすれば日頃の仕事の大変さなどもすっかり忘れてしまえるようですね」と坂井社長は笑う。
 昨年の旅行時は、社員のうち男性が12人。ビーチでのんびり寛いだり、アクティブに楽しんだり、時間の過ごし方は人それぞれ。どちらの過ごし方を選んでも満足させられるのがグアムの強みで、アクティブ派は体験ダイビングや各種マリンスポーツに挑戦したり、何人かが集まってビーチ・サッカーに興じたりした。一方のノンビリ派は、ひたすら海を眺めて過ごした者も。感想は「海が美しいので、ただ眺めているだけでも大満足」だったそうだ。
 女性陣も思い思いのフリータイムを過ごしたが、やはりショッピングは必須。1ドルが100円を切っていた頃ほどではないものの、アイテムによってはまだまだグアムのショッピングは割安感がある。日本にはないブランド品を見つける楽しみもある。ブランド品や化粧品を買い込んだ女性社員が多かったという。ショッピングの合間にはショッピングセンターやモールにある気のきいたレストランでランチを楽しむことも忘れない。ホテルに戻ればプールサイドで優雅に昼寝。女性陣の感想は「いつもと環境の異なる海外に皆で来ると修学旅行のような楽しさがある」とか。童心に返れる効果もあったようだ。

●団体旅行はグアムがお得

 グアム政府観光局(GVB)は団体旅行促進策の一環として「グアム団体旅行イベントサポートキャンペーン」を実施している。グアムを訪れる30人以上の団体旅行を対象に、現地でのイベントなどをサポートするために、1人につき10ドル〜15ドルを支給しようというもの。対象出発日は10月1日〜来年3月31日まで。
 社員旅行などの場合、18歳以上の旅行者が30名以上(添乗員を除く)集まった団体がサポートの対象。グアムに2泊以上滞在することや、滞在中にイベントを開催することなどが条件となっている。イベントといっても食事会やパーティー、シェルレイサービスやウェルカムダンス、あるいはグアムのランドオペレーター各社が契約しているオプショナルツアーもイベントとして認められるため、対象範囲はかなり広くなっている。
サポートとして支給されるのは1人につき10ドルが基本だが、201名以上の団体の場合は1人につき15ドルに増額され、さらに500名以上の場合は1人15ドルに加えてウェルカムバナーやウェルカムギフトがサービスされる。
今回の「グアム団体旅行イベントサポートキャンペーン」の特徴は、修学旅行やスポーツ合宿も対象に加わったことだ。こちらは6歳〜18歳以下の旅行者が30人以上(添乗員を除く。ただし教員や団長は人数に含む)の団体が対象で、18歳以下の旅行者が全体の90%以上を占めるのが条件。サポートの内容は、社員旅行などの場合とは異なり、記念品やウェルカムギフトが人数に応じた形で提供される。