![]() |
||||||||||||
また、輸送力も増強され、今後もさらなる成長が期待される北マリアナだが、次のステップに進むには、価格面だけが強調される現状を変えていく必要がある。「マリアナは、“のんびり”とリラックスした滞在ができるデスティネーションであることを全面に出し、観光地としてのグレードを上げるべき」との声が多く、実際、マリアナ政府、観光局、旅行会社・ホテルなど観光関連産業も、北マリアナのグレードアップに向けて動き出している。今後の動きに注目したい。 着実に成長している日本人市場 2003年は、イラク戦争などの要素もあったが、4月からの重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響は7月初旬の指定解除ま で、日本人の海外旅行需要に与えた影響は甚大であった。2003年1月から9月までの日本人出国者数累計(JNTO発表値に基づく)は、前年同期比23.2%減。4月〜9月累計では、前年同期比34.4%減の557万1459人。なお、この数字を米国同時多発テロ事件以前の2000年4〜9月と比較すると38.9%減と2002年比と近いパーセンテージ値を示しており、SARSの影響がいかに深刻なも のか分かる。とくに、今春、SARS感染被害が大きかった国・地域(中国、香港、台湾、シン ガポール、カナダ)の4月〜9月までの日本人訪問者数 累計は、それぞれ中国=45.9%減、香港=59.6%減、台湾=58.7%減、シンガポール=60.3%減、カナダ=52.4%減となり、厳しい状況が続いている。 一方で、マリアナだが、海外旅行需要自体の落ち込みの影響を受け、5月には前年比35.1%減のマイナスとなったが、これはアジア地域に限らず、マーケットの大きなどのデスティネーションと比較しても、落ち込み幅は少ない。また、9月には前年比3.3%増とプラス成長に転じ、10月には15.9%の増加を記録。2003年1〜10月累計では、1月に昨年12月グアムを襲った台風の影響で46.2%の大幅増加を記録したこともあり、僅か2%の減少幅に留めており、日本人海外旅行の主要デスティネーションの中で最も安定した市場といえるだろう。また、海外旅行需要全体が厳しい状況の中で、比較的安定した業績を残したことは、日本の旅行業界にとってマリアナが安心して送客できるデスティネーションとして認知度が高まる結果につながり、そこからさらなる送客も誘引している。 また、10月の数値は、米国同時多発テロ事件以前の2000年10月と比較しても、僅か0.4%の減少に留まり、1〜10月累計では17.3%の減少となっている。これは、北マリアナへの日本人訪問者の好調な推移が、アジア地域への渡航控えからくる追い風だけでなく、日本人マーケットが着実に需要回復していることが根底にあることを示しているといえよう。 今後も、10月26日より運航されているノースウエスト航空の成田−名古屋−サイパン線、11月から2ヶ月間、ジャルウェイズが運航している羽田−サイパン間のチャーター便の影響で、日本からサイパンへの座席総数は増加しており、曜日配列の良い年末年始もあり、さらなる成長が期待されている。
マリアナ政府観光局が発表している日本人マーケットのプロファイルによると、日本人旅行者が旅行先に北マリアナを選択する際、理由としては、気候が良いこと、飛行時間が短いことなどが大きなシェアを占めている。また、理由を「以前に旅行したことがあるから」としたシェアも高く、リピーターの存在も大きい。2003年の厳しい状況下でもリピーターの占める割合は、常に30〜40%となっている。概してリピーターが、マリアナを選ぶ理由について、「ほかの近場デスティネーションと比較して“のんびりした雰囲気”を持つところが好き」を挙げる人が多いとされる。今後、マリアナのさらなる成長を図るには、「気候が良く、短い飛行時間で行ける“のんびりした”デスティネーションであることを喧伝・広報していくことが必要」との声が挙がっている。
ただし、宣伝または広報についてだが、先述のプロファイルによれば、「新聞または雑誌を見てマリアナを選択した」とする旅行者の割合は高くない。ただし、マリアナ政府観光局では、北マリアナ諸島の魅力を訴求する広告・広報に重点を置くが、メディアについては、印刷媒体以外の広告メディアも視野に入れているとしている。また、「旅行会社」を選択の理由としている人も多いことから、「旅行会社の店舗をメディアとして利用する」可能性も考えられている。実際、アールアンドシーツアーズでは、同社の主催旅行商品「ワールドバケーション」「コンチネンタルホリデー」商品で“店舗ジャック”を行った実績があるが、各ホールセラーのマリアナ商品で同様の“店舗ジャック”を行い、マリアナの魅力を広めていくのも一つの方法であろう。日本で“のんびりした”デスティネーションであることを喧伝していく一方で、観光地の整備など、マリアナの観光デスティネーションとしてのグレードアップも必要となろう。現在、北マリアナ政府では、サイパン島において活性化プランを実施しており、既にビーチ沿いに遊歩道を整備、今後は「ガラパン地区」の歩行者天国化、アメリカン・メモリアルパークのリノベーションなどが進められる。北マリアナのグレードアップに一役買うことが期待される。
マーケット別では、主要マーケットのファミリーについては、「価格の競争がこのまま続けば、フライトの収支に影響し、昼便から夜便のマーケットへ変わっていく。このため、典型的なファミリーは減少していくのでは」との声がある。実際、「家族でビーチで遊ぶ典型的なファミリー」から、ウエディングの同行などのパターンに、ファミリーの内容が変わってきているとの見方もある。ここでもやはり、“のんびりできるデスティネーション”をアピールし、リラックスした家族での過ごし方を提案していくのも一つの方法であろう。 なお、このことは、シルバーマーケットの取り込みにもつながってくる。シルバーの取り込みは、3世代旅行がカギとなってくるだろう。“北マリアナでの3世代による、のんびりした滞在”をアピールし、需要を喚起して行くことなどが検討されている。 ウエディングも、今後成長が期待できる市場だ。年々、マリアナでの日本人挙式は増加し、2003年の目標としていた挙式組数2500組到達も現実味を帯びてきている。ロケーションの良さとハードの魅力で支持されている現状を踏まえ、今後のマリアナでのウエディング・マーケットの課題としては、従来よりさらに挙式者または参列の同伴者に満足してもらうべく、「ソフト面の強化」が挙げられている。特に、平均同伴者数が8−9名というマリアナでのウエディングの特徴を重視し、日本の披露宴的な、式後のパーティープランの拡充などが効果的とされる。 人気のあるダイビングも期待できるマーケットだ。北マリアナの海は、初心者ダイバー、久しぶりにダイビングを行う人、一生に一度潜ってみたい感覚のダイバーなどにお奨めなマーケットだ。 在日の欧米人もターゲット市場とされている。また、日本人マーケットではないが、ロシアの極東地域よりロシア人も(数はまだ少ないが)北マリアナに訪れ始めているという。彼らの市場が定着し、日本人とは違うバカンス・スタイルをマリアナで繰り広げると、マリアナの雰囲気が変わる可能性がある。まさに“のんびりした滞在”というライフスタイルをマリアナで演出することとなる。
手つかずの自然が残り、透明度の高い海の広がる離島のロタ島、テニアン島については、サイパン島とは、「別の売りだし方をすべきだ」との声がある。特に、輸送力の問題もあり、ロタ島はマスマーケットの取り込みは難しい。静かで、誰にも邪魔をされないで済む“隠れ家的リゾート”を求める、旅慣れた層に訴求していくことが一つの方法とされる。 ただし、旅行商品のパンフレットでは、サイパン・グアムの中に埋没してしまい、せっかくの魅力を出せずじまいにいる。モノでパンフレットを作成する方法もあるが、サイパン、グアム以外の島々、または東南アジア、インド洋の“隠れ家的リゾート”だけを集めたパンフレットを作成し、その中に組み込んでいくと、ロタ島、テニアン島に適した旅行者層を掘り起こすことが可能になるのではないだろうか。
マリアナの観光地としてのグレードアップについては、マリアナを取り扱う旅行会社各社も試みている。パシフィックミクロネシアツアーズ(PMT)、ホリデイツアーズミクロネシア(HTM)、ジャルパック、日本旅行、アールアンドシーツアーズの5社は現在、連携して「ホテル・レストラン・キャンペーン」を実施している。これは、旅行者がホテルでランチまたはディナーをすると特典を受けられるキャンペーン。マリアナの観光産業活性化を目的に、各旅行会社は今後も連携して、マリアナのグレードを高めるプロモーションを押し進めていきたいとしている。 |
||||||||||||