増加する海外ウエディング市場の中で、北マリアナ諸島もそのデスティネーションの一つとして浸透してきている。それを示すように、マリアナでの日本人挙式は、年々増加傾向にあり、2002年のマリアナでの日本人挙式数は約2000組。これは、5年前と比較すると約3割の増加となる。この間、9.11の事件など、ネガティブ要因はあったが、ウエディング・マーケットに関しては、「キャンセルなどの影響は出るが、ほかのマーケットと比較して目的がはっきりしているため、回復は速い」といわれ、特にマリアナでのウエディングに関しては順調に成長しているといえる。

 マリアナ政府観光局では、「地理的に近い」ことを大きな要因としている。これにより、▼日本全国から簡単にアクセスできる、▼時間を効率的に利用できる、▼代金を比較的安価に抑えることができる、▼多くの同伴者を連れてくることができる(平均同伴者数は8−9名)などの利点を消費者が享受できる。このため、マリアナでのウエディングは、忙しい共働きカップル、予算重視の客層、また多数の同行者のいるカップルなどに支持されている。さらには、準備期間も、国内での挙式と比較して短く済むことから、子供連れ・マタニティなども少なくないとされる。
 また、施設の充実も好要因だ。特に、2001年10月にオープンした「セント・アンジェロ・チャペル」など、チャペルの充実が著しい。また、
長年の実績がある日本人経営ウェディング・サービス会社の存在も、挙式者を安心させ、マリアナでのウェディングが支持される理由となっている。
 2003年についても、その傾向は変わらない。特に、2002年12月8日には過去最大級の台風「ポンソナ」の襲来でグアムが被害を受けたが、復旧期間中に挙式を予定していたお客をマリアナに振り返る特別救済プランが行われた影響で、2003年1月は組数を伸ばした。その後、イラク戦争、重症急性呼吸器症候群(SARS)というマイナス要因があり、海外旅行需要自体が落ち込むという事態に陥り、ウエディング・マーケットもその影響を免れなかったが、そのなかでもマリアナの回復は速く、申込みベースでは10月の時点で前年並みに戻っており、今後の成長も期待されている。これにより、2003年の目標としていた挙式組数2500組到達も現実味を帯びてきている。
 マリアナ政府観光局でも、「ナチュラル・アイランド・ウエディング」というコンセプトのもと、セミナーの開催などブライダル関連のマーケティング活動を積極的に行い、ウエディングの誘致を目指している。

ソフト面の強化が今後の課題

 ロケーションの良さとハードの魅力で支持されている現状を踏まえ、今後のマリアナでのウエディング・マーケットの課題としては、従来よりさらに挙式者または参列の同伴者に満足してもらうべく、「ソフト面の強化」が挙げられている。
 これには、ウエディングそのもののクオリティを高めることのほかに、チャペルだけではない、ウエディングのバリエーションを増やす試みも行われている。例えば、ホテルの庭園を利用したガーデンパーティー形式のウエディング、クルーズ船を貸し切っての船上ウエディングなどが行われている。今後も「サイパン地球人村」を利用した、チャモロまたはカロリニアンの伝統に則ったウエディングなどが考えられており、注目したい。
 さらに、手つかずの自然が多く残るロタ島でのウエディングは、サイパン島とでのウエディングとは違った魅力を持つ。実際に、2001年には歌手の野口五郎さんとタレントの三井ゆりさんが式を行ったことでも知られる。手作り的な、素朴なロタ・ウエディングは、マリアナでのウエディングのバリエーションの一つとしてだけでなく、ロタ・ウエディング自体で、他の海外ウエディングデスティネーションと勝負できる素材だ。
 また、ウエディングに付随する、写真撮影や、ウエディング・パーティーなどの部分の充実も必要とされている。
 写真撮影については、マリアナの各チャペルは、それぞれがビーチに近く、写真撮影の場所に困らないという利点を持っている。ビーチにおいて、美しい海を背景に記念撮影を手軽に撮れるということは、実は他のデスティネーションではそれほど多くなく、マリアナでのウエディングならではの魅力といえ、積極的にアピールすべき特徴といえる。
 マリアナでのウエディングの特徴として、準備期間が国内でのウエディングと比較して短く済むことから、マタニティ・ウエディングが少なくないことは先述の通りだが、マタニティ向けの対応も必要となる。具体的なプランという形での設定とまではいかないものの、ドレスの号数でゆったり目のものを用意するなど、ウェディング・サービス会社各社ともに、サービスをフレキシブルに行うことで対応している。
 北マリアナでのウエディングは、同伴者が先述の通り平均8−9名であるため、ウエディング・パーティーを現地で行うことが多く、現地で30名規模のパーティーが行われることも少なくない。また、パーティーの演出等にこだわりの強いお客も徐々に増え、日本の披露宴的なサービスを要望するケースも多い。ウェディング・サービス会社側でも、マリアナでのウエディング需要のさらなる拡大を図るため、パーティーというソフトの充実に取り組んでおり、プライベートルームを利用したパーティー、船上パーティー、ウエディング前日の両家顔見せパーティーなど、プランの提供を始めている。
 一方で、同伴者が多いが故に、新郎・新婦は同伴者の添乗員的な役割をせざるをえないケースが多い。そのようなケースにお奨めなのが、ウエディング後、同伴者にはサイパンでの滞在を楽しんでもらい、新郎・新婦は、ハネムーン先としてロタ島またはテニアン島に渡り、二人だけの静かな時間を過ごすプランだ。このケースが浸透すれば、サイパンだけでなく、北マリアナ諸島全体の需要喚起につながるだろう。




 経済の低迷が続くなかで、インセンティブ・グループ市場も停滞気味であるが、その中でも、訪問販売、自動車ディーラー、携帯電話などIT関連機器関係といった企業のインセンティブには動きがあるという。サイパン島を中心にマリアナでもその動きはあり、特に2003年は、これまでにない大規模なインセンティブ・グループも訪れている。インセンティブ・グループには、「旅行すること自体がインセンティブ」というレベルと、「毎年実施して、連続性のあるインセンティブ・グループ」というレベルが存在する。前者のインセンティブ・グループは、これまでもを訪れてきたが、後者の場合は、マリアナはあまり視野に入っていないケースが、実は多いとされる。
 インセンティブ・ツアーの場合、表彰式などのテーマ・パーティー、チームビルディングといった要素も重要になる。上述の「連続性のあるインセンティブ・グループ」の場合、毎年開催するが故に、テーマ・パーティー、チームビルディングなどの内容に対して、「昨年より上のモノ」と常にグレードアップを要求してくる。この点が、これまでマリアナで、あまり開催されてこなかった理由。特に、「マリアナには、大きなテーマ・パーティーを演出するのに必要な道具が少ない」という声がある。
 しかしながら、これまで世界各地でテーマ・パーティーなど、インセンティブイベントを手がけてきた「イベントサービス社」は、「マリアナでも、工夫次第で、大規模のインセンティブ・イベントを行うことは十分可能だ」と断言する。実際に同社は、2003年7月末に800名もの大規模インセンティブ・グループのテーマ・パーティーの演出・オペレーションを手がけ、成功を収めている。ここでは、同社に、実際に行ったテーマパーティーに関して、工夫した点などについて伺ってみた。

演出機材を日本から持ち込めるのが利点

 7月末に800名ものインセンティブ・ツアーを催行したのは、日本の訪問販売企業。実のところ、当初は、デスティネーションを上海としていた。しかしながら、重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響により、デスティネーションを変更。安全性、移動時間、日程などを考慮して、最終的にサイパンに決定したという。
 この企業は、毎年同様の規模のインセンティブを実施し、2002年は北京で行い、パーティーについては人民大会堂を使用して盛大に催行している。このため、年を追う毎に内容のグレードアップを要求するレベルのオーガナイザーといえる。では、彼らの要求に応えられるパーティーをサイパンで如何に催行したのであろうか。
 まず始めに問題となったのが、800人を収容するスペース。現地の倉庫、高校の体育館なども候補に挙がったが、最終的には、800名全員が第一ホテルに宿泊できたこともあって、第一ホテルの屋外プールサイドを利用した。
 ステージ設営、客席の装飾、パーティーの演出について、できる限り現地のものを利用したが、特殊な装置などサイパンで調達できないものもあった。この点で有利に働いたのが、「日本からの近さ」。紙吹雪を吹き出す機械、ステージのバックドロップ(背景幕)、インフレータブル(右写真)と呼ばれる空気で膨らませるだけでできる造形物を日本から持参したのだ。「日本から僅か3時間の距離なので、輸送費も他のデスティネーションよりは抑えられる。これにより、演出を意図通りにできる」と語る。
 プールサイドにステージを設け、プールサイドに客席を設置して会場としたが、ここでは客席を覆うテントが課題となった。「800名を収容できる大型のものがなく、またプールサイドという立地でもあったために、ここでは、現地より多数の小型テントを調達し、小型テントをつないで、その中にテーブルを置く形で対応した」と説明する。
 会場設営については、「ステージと客席を隔てるプールの存在を何とかしたかった」とし、「プールの真ん中に浮き橋を作成し、橋にトーチを並べ、ステージへの花道とした。また、プールに電飾、噴水を設置するなどして、プールに見えないようにした」という形で工夫をしている。
 演出については、トロピカルなテーマで行った。エンターテイメントについては、ローカルのダンサー、バンドを雇った。この辺については、問題はなく、サイパン地球人村など、固有の文化を魅力として創造し始めているため、将来的にさらにエンターテイメントのクオリティが向上し、マリアナ・オリジナルの演出が生まれる可能性もあるとしている。