品質重視のJTB(1月31日号)
日本交通公社(JTB)、近畿日本ツーリストが二〇〇〇年度上期商品を発表した。両社とも今年は「品質重視」を前面に押し出し、旅行会社の原点に帰った企画力で勝負することを強調した。日本旅行業協会(JATA)の松橋会長も年頭会見で「品質重視」を求めており、それに呼応した商品発表となった。とくに、プライスリーダーのJTBが品質重視に戦略転換したことは高く評価される。当然、低価格中心の商品を造成する旅行会社は存在するし、JTBでもそれに対しては低価格戦術で対抗するだろうが、経営戦略として品質重視を掲げたことは市場の底上げが期待できる。価格は需給バランスにより市場が決めるものだが、JTBの戦略は業界全体の戦略となる。これは、業界問わず言えることで、リーディングカンパニーが変わらなければ、業界は変わらない。JTBやその関連会社が低価格商品を販売しても、その中心軸が「品質重視」からぶれなければ良いわけだ。この機に乗じて低価格商品を仕掛けてくる会社が出てくるだろうが、「金持ちは何でも相手をする」で、それだけでは自分の首を絞めるということを実感させたらいいと思う。ところで、来週からは小社の旅行業界および航空・空港関連業界の就職セミナーが全国四都市で開催される。参加学生は約一万人。最近の学生はこの時期に既に業界のことをよく研究していて、一昨年は業界の経営状況について、昨年は旅行商品の低価格化、航空会社の直販化、二〇〇〇年コンピュータ問題などの質問が多かった。低価格では「夢も希望もない」。いくら採用が厳しいと言っても「格安航空券やホテル、安くてチープな旅行商品」ばかり売っていては、旅行会社に入社する気も起きないだろう。「航空券は航空会社、宿泊券はホテルでも販売している。旅行会社はそれらをコーディネートして、企画力のある優れた総合商品をつくっている」と堂々と言いたいものだ。さて、今年の就職セミナーはどうだろう。まずはJTBの戦略転換から話を始めようか。(石原)
信頼は回復したか(1月24日号)
二月に日本旅行業協会(JATA)の経営フォーラムが開催される。思えば、九八年の経営フォーラムでは、その真っ最中にジェットツアーが倒産した。六月にはW杯サッカー大会チケット未入手問題が発覚、一〇月には四季の旅社倒産と旅行業界の信用が問われた年だった。これを受けて、翌九九年の経営フォーラムのテーマは「淘汰の時代への挑戦」だった。この時は、「旅行業界の信頼回復が第一と低価格路線からの脱却、総需要の喚起」の必要性が語られた。さて一年後、今年のテーマは「二一世紀のリーディング産業。旅行業の新たなる挑戦」。また、特別セッションは旅行業界と航空業界のトップが一堂に会し、「旅行産業の将来展望―旅行業と航空業の新しい関係構築に向けて」である。二階俊博・前全国旅行業協会会長が運輸大臣に就任し、観光・旅行業は二一世紀を担う産業として社会的認識は高まっており、また、新PEX運賃の登場、コミッション問題、IT(情報技術)の発達など、旅行会社と航空会社のあるべき姿が問われている今日、これらのテーマは時宜を得ていると思う。ただ、景気が底を打ったとしても旅行業界を取り巻く環境は依然厳しく、大手でさえも組織の整理・統合により利益を上げているのが現状だ。三月期決算を前に旅行会社の「倒産が一息ついた」と言い切れない。とくに、Y2K問題で年末年始に旅行需要が大幅減になったことで、決算期を前に各社とも経営環境は相当厳しいのではないかと推測する。今後、大型倒産が発生すれば、たちどころにテーマは「信用回復」に逆戻りである。知り合いの大学教授からミレニアム(Millennum)というのは、「キリストが支配する一〇〇〇年」という意味で、これを信じる人をMillenariansという話を聞いた。我らが同胞が「ミレニアム」で浮かれているのは恥ずかしいばかりだが、さすがは旅行業界、テーマにこの言葉が入っていなかったことは良かった。旅行業界は来る二一世紀を見据えて、今年は今一度地固めをする年というのは、地味すぎるだろうか。(石原)
ネットとコンビニ融合(1月17日号)
セブン―イレブン・ジャパン、JTBなど八社がEC(電子商取引)の合弁会社を設立し、ウェブサイトとセブンイレブン全店舗にマルチメディア端末を設置することを発表したことで、旅行商品の販売が大きく変わろうとしている。折しも、運輸省がコンビニ等における旅行商品販売とインターネット上の旅行商品販売のガイドライン策定に動き出した矢先のことだけに、実にタイムリーな発表会見だった。これまで、旅行商品について、インターネットとコンビニのマルチメディア端末は別の次元で捉えていたが、今回はこれが「融合」されるのが特色で、セブン―イレブン・ジャパンの鈴木会長は、これを「日本型のECビジネス」と強調した。欧米ではインターネット上のバーチャル販売とコンビニなどのリアル販売は分離されていたが、最近は、インターネットサイトがリアル販売に進出する動きも出ている。その意味では、新会社の構想は時代の先端ともいえる。インターネットで商品を予約し、全国八〇〇〇店のセブンイレブンで代金決済とチケット、バウチャーの受け取りが可能になる意義は大きい。JTBの舩山社長は「他社の旅行商品も販売する」と会見で述べているが、あくまで「JTBが中心となる」との見解を示し、また、同一業種他社の参加について鈴木会長は「今後の課題」として八社で協議していくことを示唆した。したがって、JTB以外の旅行会社の新会社への参加、商品提供はJTBが決定権を握るとの印象を会見では受けた。JTBは既に、ローソンの「ロッピー」やデイリーヤマザキ、サンクスのマルチメディア端末で旅行商品を販売しているほか、ファリミーマートにも旅行商品を提供している。セブン―イレブン・ジャパンなど八社のEC新会社の設立発表を受けて、今度はファミリーマートなどコンビニ5社が提携して、マルチメディア端末で旅行商品などを販売することに合意した。これらもJTBの旅行商品販売が中心となりそうだ。このまま推移すれば、コンビニでの販売はJTBのほぼ独占状態の可能性があり、JTBと他の旅行会社は今後、ECビジネスでは相当の格差が付くことが予想される。(石原)
チャネル拡大へ(1月3/10日合併号)
新年あけましておめでとうございます。旅行業界の昨年の一〇大ニュースの筆頭はY2K問題だろうが、実際には本紙の新年号も年内にまとめているため、現時点でどういう状況なのかはわからない。それは次号で掲載するとして、旧年中は年末に運輸省がインターネットによる旅行取引に関する検討委員会、コンビニエンスストア等を利用した主催旅行商品等の販売に係る検討委員会、日本旅行業協会(JATA)が法制委員会内に設置したフライ&クルーズの取消料見直し等を検討するワーキング・グループの第1回会合を続けて開催した。フライ&クルーズの取消料見直しのワーキング・グループ会合には運輸省もオブザーバーとして出席しており、運輸省ではこの三つを喫緊の検討課題として挙げ、年明け後はこれらをまとめることが旅行行政の仕事始めとなろうか。とりあえず、新年ということでお約束の二〇〇〇年の旅行業界の展望をしなければならないが、今年は一言で言えば「販売チャネル拡大の年」とでも言えようか。インターネットやコンビニ等の検討委員会でもわかるように、旅行商品も対面販売からどこでも売れる時代に変わってきた。それがいいのか悪いのかの議論はこの際置いといて、人が集まる場所ならどこで売ってもいいという状況になりつつある。ただ、インターネットやコンビニ、郵便局、ガソリンスタンドで販売する旅行商品はこれまでの事例からみて、低価格でシンプルな商品や格安航空券などの単品になることは間違いない。そうなると、質的な部分で望むとなると、それは今後さらに対面販売で求められることになる。販売チャネルの拡大はいずれは、異業種参入を促し、どこで、「誰が」売ってもいい時代が来るのかもしれないが、その中で、旅行会社は一層プロ意識を持った商品の造成と販売が求められてくる。そこで差別化を図ることが生きる道ではないか。JATA旅行情報センターもできることだし、それを基に旅行情報産業の担い手として「質」を高めていくことが望まれる。(石原) |