-毎週月曜日発行-
2000年6月

潮流

社長の指導力(6月5日号)

 新会計基準移行による最初の連結決算の発表がほぼ終わった。業界問わず、各企業は二〇〇〇年三月期決算を睨んで、グループ各社の「負」の部分の処理やリストラに着手した結果、業績が好転した会社が目立っている。航空・旅行業界でも日本航空は九八年三月期にホテル部門の関連事業評価損を特別損失に計上し、当期未処理損失一五一七億円を資本準備金などを取り崩すことで一掃した。二年後の今三月期は単体で当期赤字を出したが、連結はもう一つの赤字体質だった旅行部門を営業黒字とし、一九四億円の当期黒字を出した。JALグループの改革の核となるのはジャルセールスネットワークで、来年四月からはJALグループは「製販」が完全に分離する。JALを始めとする運航会社六社はオペレーションに徹し、座席販売はジャルセールスネットワークが全権を握ることになる。ジャルパックやジャルストーリーも旅行商品の企画・造成に徹し、販売はJALセールスに移管される。来年四月の全面移管までは、そのためのリストラが進行するだろう。これが軌道に乗れば、JALなど運航六社はオペレーションに徹し赤字体質から脱却し、連結決算の最終損益はJALセールスの業績如何にかかってくる。同社がJALグループの浮沈を握ると言っても過言でない。一方、JTBはどうか。非上場にもかかわらずJTBも連結決算制度に移行し、今三月期はグループの五社を清算、連結で減収増益、単体で減収減益だった。JTBは、これまでの「製販分離」からさらに踏み込み、四月から事業ユニット制を新たに導入した。仕入れから商品造成、販売までをグループで一体的に運営する地域事業ユニット、専門的な旅行営業を一元的に運営する全国事業ユニット、業種別事業ユニットの3ユニットで構成される。リーディングカンパニーである両社の改革は、兼子、舩山両社長の指導力に負うところが大きい。時代の変化に遅れることなく改革することが、両者の共通した認識のようだ。今こそ、社長の指導力が問われている。(石原)

メールでCS向上を(6月12日号)

 インターネットによる旅行商品のガイドライン策定が本決まりになった。コンビニでの旅行代金収受も認可され、旅行商品のEビジネスも次なる段階に入ることが予想される。今回のガイドラインで残念なのは、旅行取引に関する条件書や約款の書面交付の電子化が見送られたことだ。プリントや郵送が認められるなら、電子メールでもいいと思う。書類としての有効性に問題があるなら、PDFやJPEG形式とするなど、方法はあるはずだ。ネット上における旅行商品の販売について、一般的に店舗における対面販売の対極に位置するような捉え方をすることが多い。これは、売り手と買い手のお互いの顔が見えないところから、ネット全般に言われることだが、偏見に近いものがある。とくに、ホームページばかりに目が向きがちだが、メールの有用性は非常に高い。例えば欧米の教育界では、不登校の生徒に対して、インターネットによる中学や高校を設立・運営するホームスクールが近年非常に発達している。わが国でも同様のインターネット高校が設立され始めており、これらのホームスクールは電子メールが教師と生徒のコミュニケーションの手段として、高い効果を生んでいる。旅行商品の販売でも、インターネット上でコンサルティング業務は可能である。これからはインターネットでも低価格な商品販売の一方で、顧客満足度の高い旅行商品の販売が求められてくるだろう。ネットで顧客満足度を高めるためには、運営を他社まかせにせず、自社要員のスキルを向上させることだ。ショッピングモールや大手のブラウザと手を組むことは確かに取扱人員を増やす意味では有効な方法だが、画一的なものになりがちだ。逆説的だが、独自性のある商品はインターネットというチャネルに最適ともいえる。パンフレット等のコストもかからない。メールはホームページの補完的役割ではなく、対面販売に匹敵する双方向のコミュニケーションツールになりうる。インターネットの旅行商品販売で最も重要なのは、ホームページのコンテンツではなく、きめの細かいカスタマーサービスだ。(石原)

ITCチャーター(6月19日号)

 日本交通公社(JTB)がF1ドライバーで有名なニキ・ラウダ氏がオーナーのイタリアに本社を置くラウダ航空を利用するITCチャーターで、七月一四〜九月一五日の二カ月間で、関空からイタリアに計約二五八〇名を送客するという。同航空のB767は毎週金曜日に出発、チャーターフライトは一〇本となる。このJTBスペシャル「ラウダ航空チャーターフライトで行くイタリア八日間」はオンシーズンの夏のヨーロッパ商品でありながら低価格に設定されている。ラウダ航空のB767にはエコノミークラスにもテレビモニターが完備し、定期便と全く遜色ない。欧米では旅行会社がチャーター便を利用して旅行募集することは一般的だが、今回、JTBが関空のITCチャーター解禁を利用して、これを実施することに意義がある。本紙が六月一二日号で掲載したITCチャーターの会計年度ベース(四月〜三月)の実績をみると、関空はITCチャーターが九九年度までの三年間で、六倍弱と大幅に増加している。一般的に定期航空と比べて、チャーター便は価格が高くなるため、わが国では欧米と比べてあまり普及していないのが現状だが、方法次第ではITCチャーターはさらに伸びることが期待される。とくに、拠点空港である羽田空港でITCが解禁されれば、関空以上に普及する可能性が高い。さらに言えば、成田空港でも二〇〇二年初夏の暫定滑走路供用時にには、ぜひともITCをチャーターを認めてほしい。運輸省は定期航空優先から成田のITCチャーターを認めないが、もうそういう時代ではない。チャーター便を定期便化するための実績づくりという考え方もあるが、海外の航空会社にはチャーター便専門の会社も沢山ある。わが国の海外旅行パッケージツアーは航空会社の路線・便数に左右されるが、今回のJTBのラウダ航空チャーターは、旅行会社が主導するパッケージツアーとして一石を投じたことになる。羽田の国際チャーター便問題を睨みながら、これが旅行業界の試金石となるのか極めて注目される。(石原)

機をみて敏に(6月26日号)

 格安航空券の代表的存在のように言われているHISも変わりつつある。先に発表された四月中間期決算をみても、増収減益に目が行きがちだが、それよりも旅行単価が上昇したことに注目すべきだろう。九九年一一月〜二〇〇〇年四月の旅行単価は九万九千円、金額にして千円程度、一〇%以上の上昇を示した。旅行会社の経営者は昨年来、旅行商品の「量より質」「価格から価値へ」と訴えてきたが、日頃、低価格で業界から槍玉に上がるHISの旅行単価が上昇したことをどう考えるか。昨年二月のJATA経営フォーラムで特別セッションに参加したHISの澤田社長は、「低価格競争をやめて共存共栄を図るべき」と訴えていた。この時は「低価格を誘引したのはHIS」と業界の反発も強かったが、旅行単価をみる限り、HISは質を高める努力を実践したのではないか。この要因としてHISは、添乗員付パッケージツアー「チャオ・インプレッソ」が前期比二八〇%だったことを挙げている。実際、HISのホームページをみると、以前のような格安航空券のオンパレードではなくて、コンテンツの中心は「チャオ・インプレッソ」に変わっている。どちらかといえば、他社のサイトの方が格安航空券を積極的に売っている印象を受けるくらいだ。ヨーロッパのある航空会社に聞くと、「売れ筋ではないということで、他の旅行会社は難色を示しても、HISは積極的に旅行商品を造成してくれる」と評価している。これもHISの営業努力ではないか。旅行会社が店舗の統廃合している中で、逆にHISは利益を減じても全国的に店舗を開設している。このまま推移すれば、いずれ「大手総合旅行会社」の代表格はJTBとHISという時代が来るだろう。大手各社が格安航空券市場に参入して以来、格安の旅行会社は経営危機に陥った。だからこそHISは低価格競争からの脱却しなければの思いが強いとも言える。HISは「機をみて敏」である。異論は多いと思うが、声高に「量より質」を叫ぶより、実践していることに価値がある。(石原)



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