中国旅行ブーム(8月7・14日合併号)
中国国家観光局の招待で、久しぶりに中国を訪問した。開放政策による経済成長で急激に変貌する中国が、現在、最も力を入れているのが観光分野であることを今回はとくに実感した。まず驚いたのが観光客の多さ。北京の主な観光目的地である万里の長城、天壇公園などは観光客で溢れ返っている。今年初めて、日本と同様に五月にゴールデンウィークを設定し、国内旅行振興策をとっている中国では、ゴールデンウィーク期間中に実に一億人が国内を移動したが、旺盛な旅行需要は現在も変わっていない。有名観光地ではとくに経済成長が著しい広州からの旅行者が目立つ。国内旅行の次に来るのが海外旅行であることは、日本、韓国を見ても明らかだ。限定的ではあるが、今秋の中国人団体訪日旅行に対する中国側の期待は大きい。既に指定旅行会社は中国側二一社、日本側六三社が決まった。中国の旅行会社では、女性だけの温泉旅行などユニークな企画が既に出ている。一方、外国からの中国への旅行者も増加傾向にある。中国国家旅遊局によれば、今年上半期(一〜六月)は日本からの旅行者が前期比二一%増で、一〇〇万人を既に突破した。通年では二一〇万人を超えると予測されている。また、一時伸び悩んだ韓国からの旅行者も回復し、上半期は四一%増、米国からも一九%増と各国の中国訪問者はほとんどが二桁台の伸びを示している。これに対応し、下半期は旅行会社の多くは、中国旅行商品の強化を打ち出している。現地でパッケージツアーに参加した日本人旅行者に話を聞くと、ほとんどがリピーターで、寝台列車の旅や世界遺産を巡るという「特選コース」の人が多かった。旅遊局はこれから期待するデスティネーションとして、雲南省シャングリラ、四川省九塞溝、張家界そして海南島を挙げている。中国側には日本の旅行会社の代金支払いの遅さに対する不満が依然としてある。中国人訪日旅行では逆の状況となるが、支払代金の前払い化は、今後さらに重要な課題となろう。(石原)
航空共同サイト設立(8月21日号)
航空会社の共同サイト設立の動きが、ここに来て風雲急を告げてきた。一面にもあるように、遂に国内航空三社が国内航空券の販売で、共同サイト運営会社の設立を発表し、インターネット上で国内航空券の比較購買を実施することを決めた。JATAや大手旅行会社は、旅行業者にも同一条件下での国内航空券のインターネット販売を求めているが、現実には非常に厳しい状況だ。航空三社は旅行業者に対して、ホームページにリンクすることで、「旅行会社に配慮した」とするが、これが「同一条件」とはとても思えない。加えて、今度は日航、全日空がノースウエスト、ユナイテッド、さらにはアジア・オセアニア地域九社の航空会社と共同で共同サイト運営の持ち株会社を設立し、その会社と世界最大の旅行サイト「トラベロシティ・ドット・コム」と合弁で、日本市場向けの海外旅行ウェブ事業会社を設立することを決定した。このウェブ合弁会社では「ペックス運賃を拡販したい」と航空会社のある幹部は明言している。日本で成功している旅行のホームページは、海外の格安航空券やホテルの予約が多い。とくに、航空会社のインターネット上でゾーンペックスを本格的に販売すると、格安航空券のサイトには脅威だろう。欧米の航空会社による共同サイトの設立の波が、一挙に日本にも押し寄せている感じがする。「航空会社は航空券、旅行会社はパッケージツアーを販売する」ことで「共存共栄する」という航空会社の考え方がはっきりした。航空会社はこれまでも「個札中心」であり、インターネットという新しい販売チャネルの登場で、それが具体化したにすぎない。パッケージツアーから個人旅行の流れの中で、航空券の八割を代売する旅行会社にとって、パッケージツアーだけで生きていくことは死活問題になる。これにどう対応していくかがテーマとなろう。共同サイトでは、国内であれ、海外であれ、必ずインターネット正規割引運賃が登場する。日航の現在の「e割」はトライアルで、共同サイトで実運用になるだろう。今こそ、旅行会社の共同サイトが必要だ。(石原)
ECと義理人情(8月28日号)
世の中、誰も彼もがIT革命、Eコマースと言い、ボーダレスによるグローバルスタンダードや世界標準が時代の流れと囃し立てるものだから、どうも浮き足立っている気がする。旅行業界もご多分に漏れず、先週の本紙の「旅行評論」で小田急トラベルサービスの宮本康幸常務が旅行EC市場について、「旅行業界には流通革命が必要だが、それは喧伝されるネット販売のようなものではなく仕入変革にある」と喝破されていた。本紙が「Eコマース・Eトラベル」という常立てページをつくったのは、旅行EC関連ニュースが大量に流れだし、これを整理・総括して掲載する必要があると判断したからで、旅行EC市場を客観的に捉えるスタンスに変わりはない。最近の動きをみていると、インターネットで先行している欧米が全て正しいような風潮があって、日本の特殊性(独自性)に対する風当たりが日増しに強くなっているように感じられる。わが国の旅行業界は世界中のどこよりも産業規模として大きな業界であり、それは誇って良いことではないか。これだけの雇用を創出している旅行業界が世界のどこにあるかと言いたい。世界に冠たる日本の流通制度の中で、どれだけメーカーが恩恵を受けてきたことか。代理店、特約店があればこそ、日本経済はここまで発展してきたのではなかったか。IT化は認めるが、「革命」はないだろう。今の政府・与党で「革命」はできないでしょう。最初に退場するのはあなた方だ。「変革」か「保守」が嫌う「革新」の方が適正ではないか。食える国に革命は起きない。航空会社もそう。さんざん護送船団方式で生きてきて、旅行会社に代わりに航空券売ってもらっておきながら、時代の流れと言って、欧米の尻馬に乗り、今更「直販・中抜き」はないでしょう。「世の中義理人情を欠いたら生きられないよ」。何だか「長屋のご隠居」みたいになってきたが、要するに地に足を付けてEコマースを見据え、航空会社が旅行会社に歩み寄って「共生」する道を見つけること。日本の国情に合った旅行EC市場を構築することで、双方の業界が発展すると私は思う。(石原) |