-毎週月曜日発行-
2000年10月

潮流

 旅行ITは平等(10月2日号)

 「旅行取引のIT化と消費者保護のあり方について」の中間報告が、運輸省の「IT検討委員会」から発表された。後追い的な感は否めないが、インターネット取引で電子的手段による書面交付を認めたことは評価される。中間報告の全文を読むと、旅行会社に対して、かなり配慮しているとの印象を受ける。例えば、「前文」で「インターネットにおいては、他の業種、例えばホテル・旅館等の宿泊業者や、運送機関等との同じ市場での競合が一層鮮明になる側面があることから、これらの事業者間の競争条件の均衡に十分配慮する必要がある」と旅行会社とサプライヤーの競争条件の平等性を指摘している。また、Eチケットなど「チケットレスサービス」についてもサプライヤーやチケット販売業者との競争条件で、「旅行業者等の取扱いが不利にならないような環境整備が必要」としている。さらに、ショッピングモールにおける旅行商品の取扱いについても、先の「ガイドライン」でも示されたが、モール運営業者に旅行業の登録を求めている。インターネット取引において、いわゆる「中抜き」による直販化が進行するというのは、旅行業界に限ったことではないが、旅行会社とサプライヤーが平等の条件で競争する環境が必要と指摘するなら、航空会社のみが販売するインターネット割引運賃や国内航空三社による共同サイトの開設などはどうなるのか。とくに、旅行会社のサイトで国内航空券が販売できない現状について、中間報告は「旅行会社にも取り扱えるようにすべき」と言っているように文脈からは読みとれる。ということは、JATA「流通基本問題検討特別委員会」と航空三社との「意見交換会」では、この中間報告を論拠に、旅行会社のサイトでも航空会社の共同ウェブサイトや航空会社のサイトと同一条件で、等しく航空券販売ができるように強く要望できるのではないか。中間報告を受けてなのか、JALは一〇月からの国際線eチケットサービスの拡大で、「将来的に旅行会社の取扱いも可能にする」と発表している。運輸省を交えて議論する時が来ている。(石原)
 
首都圏湾央空港(10月9日号)

 首都圏湾奥新空港研究会が九月二七日に東京・日比谷公会堂に2000人を集めて、シンポジウムを開催した。さながら決起集会のようだったが、運輸省がこれまで調査していた首都圏第三空港が、未だ候補地も選定されず、業を煮やしての開催とも見受けられた。首都圏第三空港はどうしても羽田の再拡張の議論を抜きにしては語れず、運輸省内にも今の時代に一から首都圏に海上空港を建設するよりも、羽田を再拡張する方が現実的であるし、利用者であり納税者も納得するという意見は根強い。一方で、運輸省が首都圏第三空港を最初から羽田の国内線を補完する国内空港と定義していることも、羽田国際化の論議と相俟って、どうも世間一般と乖離し始めているように感じられる。湾奥新空港研究会が開催された前日、運輸省内では首都圏第三空港調査検討会が開催された。同検討会は首都圏第三空港の候補地を複数に絞り込むためのものだが、それ以前にメンバーから運輸省が首都圏第三空港を「国内線利用」に限定していることに意見が集中、「国際化の議論をするべき」「外国からの信頼を失う」と強い指摘もあった。そうした中で、定期航空協会を代表して横山善太日本航空副社長は、羽田空港の再拡張を主張した。首都圏第三空港を新たに建設するのか、それとも羽田空港を再拡張するのか、この二者択一論議が高まるであろうと予測された翌日、首都圏湾奥新空港研究会が開催されたわけである。新空港は東京湾の沖合に二〇一〇年までに滑走路一本、一五年までに四本整備し、ターミナルは羽田空港を利用するという完全セパレート方式。ターミナルと滑走路エリアは海底トンネルで結ばれるという。こうしたセパレート方式の空港が世界にあるのか私は知らないが、日本の国情に合わせた試みともいえる。湾奥新空港は羽田のターミナルを二系統にすることからも、当然国際線も視野に入れていると思われる。旅行者の手荷物や貨物の流通をどうするのかなど課題は多いが、首都圏第三空港と羽田再拡張を統合する計画として実に興味深い案である。(石原)

 強い指導性を(10月16日号)

日本航空が来年四月発券分から、国際線航空券販売手数料を九%から七%にカットすることを遂に決定した。旅行会社へのコミッションがIATAで自由化されて以来、「時間の問題」という声も聞かれてはいたが、日本のフラッグキャリアが口火を切って、しかも二%カットするとは、その影響は実に大きなものがあるだろう。昨年来、内外の航空会社の役員に、インタビューする度に同じような質問をしたことがある。それは、航空会社がコスト削減をする時、自社のリストラ以外に何があるのかと。一様に返ってきた答えは、「旅行会社のコミッションカットと空港使用料の引き下げ」だった。空港使用料は既に関空を始め成田以外の空港では引き下げは現実のものとなっている。もう一つのコミッションカットは米国で始まり、いずれは日本に波及するという懸念があったが、質問をした当時は「日本の国際航空券販売の八割は旅行会社に依存しており、旅行会社との関係に配慮して、コミッションカットは難しい」というのが本音であったように思う。しかし、インターネット運賃「e割」、国内航空会社の共同ウェブサイトと、航空会社による直販化の動きが加速する中で、時機到来とコミッションカットに踏み切ったと思える。航空会社の格安航空券への締め付けが厳しくなる中で、旅行会社は販売手数料をカットされてもPEX運賃を販売せざるを得なくなるのだろうか。そういえば、日航は国際線のEチケットサービスを来春から旅行会社にも取り扱わせると表明した矢先のコミッションカット発表だった。これで旅行会社は「独自の旅行商品を企画・販売するという原点に帰る」と言うなかれ。それができる旅行会社の数は限られる。代売に依存しているにせよ、旅行会社の数が多かったからこそ、旅行業界はここまで発展してきたのであり、このまま行けば、来年には廃業する旅行会社が増えるだろう。本当に淘汰の時代が来れば、旅行業界は衰退する。今、一番もと求められているのはリーダーシップである。それはJATAであり、JTBである。「二一世紀は旅行の時代ではあっても旅行業の時代ではない」と言葉が、一段と現実味を帯びてきた。(石原)



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