アライアンス加速(1999年2月22日号)
国内航空三社のアライアンスへの動きが、年が明けてから慌ただしくなってきた。昨年、アメリカン航空と包括提携に合意した日本航空は、年が明けた一月一三日、AALとのコードシェアリングを五月一日から第一段階として三〇路線・週一九二往復行うことを発表。さらに、日米国内線を含み七月、九月と段階的に実施する。また、翌一四日に今度は英国航空と包括提携に調印、日本からの減便が続いたBAWと関空―ロンドンをコードシェアリングすることを発表した。さらに、二月にはキャセイパシフィック航空とのコードシェアリングも発表。それでも日航は現在も、個別の包括提携を強調し、ワンワールドへの参加は検討課題としている。一方、既に、一〇月のスターアライアンス加盟を表明している全日空は昨年秋から日航より一足早くユナイテッド航空とコードシェアリングを開始、今年四月からは自社運航の成田―シカゴをはじめシカゴから米国内五都市もコードシェア運航を行う。加えて、スターアライアンスに加盟するバリグ・ブラジル航空、アンセット・オーストラリア航空、ルフハンザドイツ航空ともコードシェアを開始、FFPではエアカナダ、スカンジナビア航空とも提携した。日航も全日空もまだアライアンスに加盟していないが、この一連の動きをみれば加盟したも同然だろう。これらをみて、日本エアシステムもノースウエスト航空と関空―福岡・沖縄線のコードシェアリングの調整に入った。今後はNWAの太平洋路線、アジア以遠路線のコードシェアを模索することになろう。こうなると、複数のターミナルを持つ空港はますます混乱が予想される。とくに、成田の場合、一ビルは有力海外キャリア、二ビルは国内キャリアと色分けされている。空港関係者の中には「一ビルにANA・UAL、二ビルにJAL・AALの方がいい」と言い切る人もいる。しかし、アライアンスもまだ確定したわけではなく、今後も離合集散など不透明な要素もある。アライアンスに今後は、旅行会社も空港関係者も消費者も対応していかねばならない。(石原)
現場主義と情報化(1999年2月15日号)
六日に開催されたJATA経営フォーラム99は、実に興味深いものがあった。まず、中坊公平住宅金融債権管理機構社長の基調講演は、旅行業だけでなく、全ての会社経営者に聞かせたい内容だった。氏の言葉でとくに印象的なのは、仕事は「現場主義」であり、デスクで考えていても何も始まらないということと、「退路を断って賭に出ろ」という二点。現場主義については、今流行の映画ではないが、「事件は現場で起きており、会議室で起きているのではない」と通じるものがあり、「机上の空論」では何も生み出せないということだろう。HISの澤田社長も「インターネットの時代で旅行産業は情報産業へと発展していくが、その一方でヒューマン・コミュニケーションの重要性が増してくる」という趣旨のことを述べていた。インターネットとフェース・トゥー・フェース、この二つをうまく折り合いを付けていくことが、これからのビジネスに最も大事なことと感じた。また、「退路を断って賭に出ろ」は逃げ道をなくして、責任を持って経営に当たれということと思うが、これは実に厳しい言葉である。中坊さんの前では銀行経営者がビビるのも無理からぬところである。ところで、JTB、ジャルパック、HISの三社長による特別セッションは、中身は本紙に譲るとして、三社長、とくに舩山JTB社長と澤田HIS社長が、堂々と「表」で議論を交わしたことに大きな意義があると思う。両社の動き一つで、業界の地図が変わるほど、ともに影響力は大きいわけで、もっと議論を重ねて、業界で指導性を発揮してもらいたい。舩山社長は業界の将来のリーダーに対して、送る言葉として「人間はタフでなければ生きていけない、優しくなくては生きる資格はない」と述べた。これは、確か米国のハードボイルド作家、レイモンド・チャンドラーの小説に出てくる一節だったと思うが、競争と協調、リストラと社員への利益還元など、言葉を置き換えると今の時代にも十分に通じる言葉と言えよう。(石原)
ネットは単品勝負(1999年2月8日号)
遅ればせながらようやくホームページを開設した。ホームページは立ち上げはできても、日々のリニューアルが大変なので、ずっと検討課題にしていた。最近、作成ソフトがDTPのようになり、作業が効率的に行えるまで進化したため開設に踏み切った。新聞社のホームページなので、情報に特化し、まずは本紙や日刊旅行通信、海外旅行業便覧、旅行業データベースを補完する形で展開したいと思っている。また、業界紙と違って、ホームページは不特定多数が相手なので、弊社のイベントである業界向けの就職セミナーなどの告知に役立てていきたい。実際、ホームページを立ち上げてみて、JTBやHISのそれは毎日更新されて大したものだとつくづく思う。一度あるホームページを見て、翌日変わってないと、もうそのホームページにアクセスする気がなくなるのだから、本当に勝手なものである。それにしてもインターネットは速報性が命だと思う。米国で盛んな株式の売買ではないが、日々刻々と変わる情報が必要な商品の販売に最も威力を発揮するのがインターネットといえる。同じように、価格が日々変動する格安航空券もインターネットには非常に向いている。とにかく、見つければ勝ちなので、先を争ってHISのホームページを消費者がアクセスするのもうなづける。逆に言うと、有機的な色彩が濃いパッケージツアーはこうした単品よりも、インターネットには向いていない気がする。今は何でもインターネットだが、今後は米国のように特化されていくのではないか。先見性のあるHISの澤田社長が協立証券を買収して、金融業に進出したのもそれを見越してのことと推測する。一〇月からの株式手数料の自由化を前に、米国のEトレードのように、インターネット上で株式の売買を本格的に手掛けるのではないか。HISのホームページをみると、それは十分可能と思う。一方、旅行商品に品質を求めるなら、インターネットで告知を見て、それからお店で話を聞いて契約する。それが自然な流れだと思う。(石原)
JTBの戦略転換(1999年2月1日号)
JTBは九八年度下期からのIT運賃の下限値撤廃を見越して、九八年度上期のルックJTBから下限値割れの低価格商品を発売し、格安戦略を打ち出した。矢継ぎ早の格安航空券の参入とともにJTBのこの戦略に業界大手は雪崩を打って後を追い、付いて来れない会社は倒産し、大手といえどもリストラを迫られているのが今日の現状だ。需要の冷え込みから消費者が低価格の商品を求め、それに即応する形で供給側が安値商品を提供するのは経済の原則とはいえ、さすがに厳しいものがある。しかし、これを乗り越えないと、次の時代が来ないというのも事実だろう。あれから1年。ルックJTBの九九年度上期商品は平均価格は値下げしても昨年のようなHISへの対決姿勢は薄れ、「最低価格にこだわらない」「格安戦略はやりきった」という「終結宣言」とも受け取れるコメントが印象に残った。昨年一年間の「全面戦争」でJTBも疲弊した。とくに、支店の取扱人員は増えたが、提携販売店の経営が厳しさを増したという。ホールセラーとしては提携販売店とともに生きることが大原則であり、その意味でJTBは次のステップは「JTB系列の強化」とも言える。その象徴がルックJTBの赤表紙のパンフレットであり、その大増刷は販売店の棚を「赤い表紙で埋め尽くす」ことを狙いとしている。HISの澤田社長は年頭の本紙とのインタビューで、JTBに対してリーディングカンパニーとしての自覚と指導的役割を求めた。そして、業界に「競争」とともに「協調」が必要なことを訴えた。裏を返せば、年率一〇%の売上高の伸びは維持しているとはいえ、HISも決して楽ではないことを示唆している。今回のルックJTBの上期商品はそれに対する回答とも受け取れる。一つの柱として環境問題への取り組みを打ち出すなど、業界トップとしての姿勢を読み取ることもできる。JTBの協調志向は業界のモラルを回復し、引いては消費者の信頼を呼び戻すことになろう。(石原) |