-毎週月曜日発行-
1999年3月

潮流

バリアフリー(1999年3月29日号)

 「障害者」という言葉にはどうしても抵抗感がある。その対比語である「健常者」とどこが違うのかという問いがそこにあるからだ。だれが「障害」と「健常」を線引きするのか、政府が認定する「障害者手帳」を持っている人が「障害者」なのかと言えば、決してそんなことはない。「障害」は人によって様々で、それを一括りにすることはできないからだ。「障害者」という言葉には「あなたは障害者です」という烙印を押しているようで、その言葉によりハンディキャップを持つ人とその家族を無意識に傷つけているのではないか。英語にすれば事足りるとは思わないが、そうした状況があるなら「障害者」は「ハンディキャップのある人」と言い替えた方がいいと思う。日本旅行業協会(JATA)のハートフルツアーの名称は素晴らしいが、「障害者旅行」の文字を目にしただけで、そこに「健常者」との明確な区別を感じてしまう。本紙も三月二二日付のハートフルツアーセミナーの記事で、「障害者旅行」という言葉を使っており自省している。わが国では、未だにハンディキャップのある人を奇異に見る傾向がある。それが旅行に行かない最大の理由だと思う。もちろんハードの整備もあるが、もっと大事なのはそうしたソフトの整備、一人ひとりの心の問題ではないか。教育には「統合教育」と「分離教育」がある。日本は「普通学級」「特殊学級」「擁護学級」と分けてきた。こうした分離教育がある部分効果があったことは認めるが、分離教育は「隔離した」教育であり、「統合教育」が根付かなければ、わが国が本当に「バリアフリー」になる時代は来ないだろう。ジャルパックの岐部常務は日常の中でハンディキャップのある人への旅行は行っており、改めて言うことではないと語った。それが理想であり、JATAもハートフルツアーで全ての旅行業者にそうなってもらいたいのだと思う。バリアフリーはハートとハードの両面からの取り組みが必要である。(石原)

JAL直販化(1999年3月22日号)

 九九年度から二〇〇〇年度までの三カ年計画を発表した日本航空の兼子社長は会見の席上、「インターネットを使った直販も時代の流れであるので、拡充を図っていきたい」と述べた。JALの社長が直販化を明言したのは初めてのことではないか。長く国際線をわが国で単独運航してきたJALは、旅行会社と最も緊密な関係を築いてきたように思う。時代の流れとはいえ、やはり航空会社の直販化を再認識せざるを得ない。また、兼子社長はジャルパック、ジャルストーリー、ジャルカードなど営業系関連会社を含めたJALグループ各社の総合力結集による販売体制を強化するため、JAL本体の販売部門の分社化を含め、新しい販売体制について、99年度上期中に具体的な方策を策定することを明らかにした。詳細は次号に譲るが、JALのある幹部が漏らした「JALに残るのは将来は企画部門だけになるかもしれない」とという言葉もあながち冗談とは言えなくなってきた。いずれは、運航・整備部門も分社化するかもしれない。JALが子会社への路線移管や営業部門を分社化することで、本体はスリムになるだろうが、求心力がなくなるようである種の寂しさも感じる。海外エアラインはドラスティックなリストラを断行するが、本体をここまで手を付けることはないのではなかろうか。しかし、そこまでやらないと構造改革できないというのが兼子社長の経営方針だろう。JALはビジネス路線に特化し、航空券の直販化率を高め、その一方で、旅行商品はジャルパックとジャルストーリーのシェアを伸ばすというのがJALグループの戦略か。ジャルパックの新町社長は以前、旅行会社の提携を今後の方向として示唆していたが、東急観光をはじめとしてホールセラーがアイルやアヴァを主力商品にリテーラーへの道を歩み始めており、ジャルパックの求心力は強まっている。アジアやリゾート路線を拡充するジャパンエアチャーターは、いずれはジャルパックと一体化していくのではないか。

総合旅行産業(1999年3月15日号)

 ある旅行会社の元社長で、現在は相談役を務めている某氏と話をしていた時、本当は航空会社に就職したかったが、それが果たせなくて旅行会社に入社したことを打ち明けた。今はそれほどでもないが、昔は航空会社が旅行会社に(席を)売らせてやっているという意識が強かった。今でも日本の運輸行政は「航空運賃一つとっても航空会社よりで、旅行会社のことを考えていない」と指摘する旅行会社の役員もいる。わが国の場合、未だに重厚長大産業偏重主義のところがあり、装置産業である航空の方が流通サービス業の旅行よりも上とする見方があるのも事実だろう。こうした考え方がインターネットをはじめとする情報産業に対するわが国の発展を妨げるようで仕方がない。インターネットを悪用した犯罪が発生すると、必ず「インターネットは陰湿で、人間性が失われる。早急に規制すべき」と声高に叫ぶ人がいるが、米国のようにインターネットの普及を促進しつつ最低限の法的枠組みを考えるというような時代に即した考え方ができないものかと思う。話を戻すと、航空会社がほとんど子会社に旅行会社を持ち、ホールセラーとして旅行商品を造成しているが、旅行会社が子会社として航空会社を保有したのは、わが国ではHISが初めてだ。このことだけでも旅行業界は誇っていいことではないか。私は観光の中に旅行があり、旅行の中に航空、鉄道、ホテル、旅館、空港、駅があると考える。したがって、航空・空港関連業界も広義の意味では旅行産業の一部だと解釈する。旅行会社も当然旅行産業の一部である。総合旅行産業を目指すなら輸送手段もホテルもリゾートもクルーズも保険も手に入れたいと思っても不思議ではない。例えば、ジャルパックでJALに乗りJALホテルに泊まるように、インターネットで予約してHISでスカイマークに乗りウォーターマークホテルに泊まる時がいずれ来るだろう。JALもHISも目的は一つである。(石原)

全日空ハワイ減便(1999年3月8日号)

 全日空の九九年度事業計画がようやく発表された。既に、明らかになっていたとはいえ、悲願とも言われた成田―ホノルル線をデイリーから週四便に減便したことは非常に残念な気がする。全日空は計画の中で、成田線はビジネス中心、関空線は近距離国際線に特化すると明言し、一〇月のスターアライアンス加盟に向けてコードシェアを拡充する見解を示した。とくに、成田―シカゴ線を開設する上で、成田空港の発着枠を確保するために敢えてホノルル線の減便に踏み切ったことはわからないでもないが、国際定期便に進出するためにハワイチャーター便を運航していた、これまでの国際線展開の経緯を考えると、収益性が第一としてもホノルル線には関係者の中には特別な思いがあったと推察する。思い出すのは日本エアシステムが成田―ホノルル線を運航していた当時のことだ。JASはホノルル線の運航権利を獲得したものの、週二便に限定されていた。他社がデイリーでばんばん飛ばし、いろんなバリエーションの旅行商品が造成されているのに対し、週二便ではとても旅行商品を造るのに無理がある。当時、JASもJAS商事も、これでは競争したくても競争できないと嘆いていた。結局、成田―ホノルル線は運休となり、JASは三発機のDC一〇の稼働率維持に苦労することになる。全日空ワールドも同様である。インハウスの宿命とはいえ、全日空ワールドはホノルル商品を週四便の中で造成しなくてはならない。二〇〇万人の日本人観光客が訪れる最大の観光地、ハワイへの路線開設は、日本の航空会社にとって国際線進出の代名詞でもあったが現実は厳しい。他の航空会社でも関空、名古屋からのホノルル線を既に減便しており、ハワイへの供給席数はサマーダイヤでさらに少なくなる。JTBでも格安商品との競合で、ハワイ商品の取扱人員が減少している。ハワイ復活が待たれる。(石原)

信頼回復にボンド制(1999年3月1日号)

 七回目を迎えた弊社主催の旅行業界就職セミナーが始まった。二月二七日の東京を皮切りに三月一日に名古屋、二日に大阪と続く。今回は航空・空港関連業界就職セミナーと分けたにもかかわらず、参加者は過去最高を記録し、両セミナーともに申込みベースで五〇〇〇名を突破した。東京では、JTB(日本交通公社)とジャルパックから二氏と就職コンサルタントの三名の方に講師をお願いし、旅行業界の現状や将来性について語っていただいた。当日の会場やインターネットを通じて学生からは、旅行業界の信頼性回復や信用度、さらには旅行会社の経営理念などについて鋭い質問が相次いだ。学生側からすれば、「買い手市場」ではあるけれど、信頼できる会社に就職したいと思うのは当然だろう。大手旅行会社への人気はもちろん高いが、学生側も非常に良く業界を研究しており、中小の旅行会社に対する関心度はここ数年高くなってきた。旅行業界をイメージだけで捉えるのではなく、イメージと現実の両面から把握しようとする姿勢が見受けられる。とくに、SITの旅行会社に関しては、「海外・旅の専門店連合会」(たび専)の設立など、学生にとっても新しい時代の動きと感じているようだ。信頼できる旅行会社とはとの問いに対して答えは難しいが、海外主催旅行会社に関して言えば、ボンド制は一つの目安になると思う。ボンド制は現行の弁済制度を補完するものだが、消費者に対して海外旅行をする上での安心度を高める効果がある。任意加入だからこそ、販売計画額の1%を敢えて積む会社は信頼できると言える。消費者はもちろんのこと、旅行業界に就職を希望する学生にとっても、ボンド制は志望会社を選択する上での目安となろう。ほとんどの海外主催旅行会社がボンド制に加入したら目安にならないと言われそうだが、それは信頼回復に向けて旅行業界のモラルが高まったということで、業界の地位向上に向けて最も喜ばしいことである。(石原)



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