ネットは宝の山か(1999年4月19日号)
通産省がコンサルティング会社と共同で調査したインターネットによる電子商取引の企業と消費者間の国内市場規模は、二〇〇三年には現在の五〇倍の三兆一六〇〇億円になり、とくに旅行はパソコンを抜いてトップになり、現在の八〇億円から一〇〇倍以上の九一〇〇億円に達するという。これは大変な伸び率である。二一世紀は観光の時代とは良く言われるが、それを牽引するのがインターネットなのかもしれない。米国のマーケティング会社の調査でも、確か数年後にインターネットで最も流通するのは旅行という調査結果が出ていた。日本は米国より五年遅れているというが、米国は現在、電子商取引の成長期の真っ直中にあり、日本は二〇〇一年に成長期が来るという。九一〇〇億円市場に乗り遅れないために、インフラとコンテンツをサプライヤーが今から整備しないと市場を失う恐れもある、と通産省は警告している。市場をリードするJTBやHISはインターネット市場を他社に先駆けて研究しており、異業種との提携に対する関心も高い。四月一日に設立された「ぴあデジタルコミュニケーションズ」にJTBは資本参加した。ただ、旅行といっても、それではインターネット上で何が売れるのかというのが問題だ。以前も書いたが、航空券や宿泊券など単品は伸びると思うが、パッケージツアーは難しいのではないかというのが大方の見方だった。しかし、コンテンツがしっかりしていれば、パンフレットに引けをとらないビジュアルな商品紹介がインターネット上でも展開できる。カラープリンターの性能向上と低価格化は今後一層進むだろうから、そうなると、ホームページからダウンロードし、プリントアウトするだけで、ビジュアルなパンフレットを自宅に居ながらにして入手することも可能になる。気に入ったら予約・電子決済すれば手続は完了する。回線使用料も安くなっているし、アクセス速度も格段に早くなっているだろう。これに乗り遅れると、やっぱり宝の山を失いそうだ。(石原)
底からの脱却(1999年4月12日号)
先の運輸省運輸政策局がまとめた景気動向調査やJATA(日本旅行業協会)が発表した海外旅行商品動向調査をみると、どうやら景気も底を打ち、回復傾向に向かっているようだ。しかし、マイナス幅が減っている段階で、水面下にあることは変わりない。一昨年のレベルには達していないが、日銀短観も景況が下げ止まり感であると表明しているし、決して楽観はできないが、世の中全体の景気が上向いているのは肌で感じることができる。こうした回復傾向にある時、一番大事なのは価格ではないか。旅行会社が等しく厳しい状況下では、低価格競争は自分の首を絞めるだけだ。羽生運輸政策局長も底を打った時に価格の限界を知ると言っていた。正常な業界なら自然と需給バランスに合った価格に上向いてくるはずである。当然、売上に見合った利益を確保するようにしていかなければならない。関空からの航空会社の撤退・減便が相次いで、航空会社の身勝手さを非難する向きもあるが、利用率九〇%を超えていても赤字では撤退・減便も止むなしといえる。低価格市場にしてしまったのは航空会社、旅行会社双方に責任があるのではないか。ある旅行会社のマーケティング担当から聞いた話だが、昔は広告代理店も旅行代理店も似たようなステータスだった。ところが、広告代理店はマージン商売から「創る」というクリエイティブな思想を持ち、ステータスを高めたのに、旅行代理店はマージン商売から抜け出すことができずに今日に至ったと。もちろん、独自の旅行商品造成を手掛けている旅行会社も多数いるし、業界のステータスを高めるために努力している人もたくさんいる。しかし、世間全般の評価からすれば、この言は当たっていると言えなくもない。今年は品質が問われる年、専門特化の年と業界の重鎮も語っている。底を打った今こそ、価格競争から品質競争で勝負し、業界のモラルを高めたいものだ。そういえば、JTBの松橋会長も「短期辛抱・長期楽観」と言っていた。底を打った今が辛抱のしどころだ。(石原)
春まだ遠い関空(1999年4月5日号)
関西国際空港のサマースケジュールが発表になったが、依然厳しい状況が続いている。九月のピーク時の就航便数は昨年夏期よりも週四〇便少ない週六一二便ということだが、実際にはさらに少なくなることが確実視されている。関空では昨年英国航空が撤退したのをはじめ国内・海外キャリアの減便が相次いでおり、今後もこれが加速するのではないかと心配されている。最近では、ユナイテッド航空(UAL)が六月でロサンゼルス線の運休を決め、地元では衝撃が走っている。これで、UALの旅客便はサンフランシスコ線のデイリー運航のみとなる。しかも、これは全日空とのコードシェアリングであり、昨年のサマースケジュールでは週四〇便運航していたUALも大幅な減便を強いられた。地元で聞くと、関西マーケットの値崩れは手の施しようのないところまで来ているようだ。UALのロサンゼルス線にしても、利用率は二月、三月は九〇%台に達しているという。それなのに損益分岐点に達せず撤退を余儀なくされた。他社も同様であり、どこまで我慢するかの状態だという。これでは、撤退、減便してもおかしくない。現状では一〇〇%の利用率でも採算は取れない状態らしい。海外旅行需要の冷え込み、低価格競争、為替差損といったマイナス要素が重なり、関空路線の維持は各社とも限界点に達しているようだ。運輸省と地元との調整がまとまり、関空は三月一三日から新しい陸上ルートが導入され、発着回数は年間一二万回から一六万回に増加された。しかし、減便に次ぐ減便で皮肉な結果となった。これは、関空会社の収支計画にも大きな影響を与え、今後の収支計画の見直しを迫られるだろう。関空は来年度から2期工事の着工に入るが、これが必要かどうかの声も出てきている。しかも、成田空港の平行滑走路が二〇〇〇年度末に完成すれば、関空へ「仮に」乗り入れている航空会社が雪崩を打って成田に移行するのではないかと危惧されている。大阪に春が来ても、関空は厳しい寒さが続いている(石原) |