-毎週月曜日発行-
1999年5月

潮流

ガイドライン(1999年5月31日号)

 「ガイドライン」と言っても、今国会で成立した日米防衛協力のための指針関連法のことではない。インターネット上で販売する旅行関連商品について、ガイドラインが早急に必要ではないだろうか。昨年四月に日本交通公社(JTB)がインフォクルーを立ち上げ、インターネット上でパッケージツアー、航空券、宿泊施設などの予約・決済を始めたが、当時は運輸省観光部との調整で、インターネットによる主催旅行商品の販売は通信約款が適用され、契約成立までには画面上に通信約款、取引条件説明、契約書面が表示され、印刷の有無までチェックボタンが付いていて手続は結構面倒だった。予約・決済の時間帯に旅行業務取扱主任者が待機していることも条件の一つで、そのためにJTBは二四時間のオンライン予約ができなかった。しかし、五月一七日から運用開始したジャルパックの「eトラベル」はフロントページに標準約款と旅行条件書のボタンはあるが、申込者全員に旅行条件書を郵送することで、画面上での旅行条件書の確認・印刷は申込者の判断に委ねられている。また、旅行業務取扱主任者が二四時間待機していなくてもオンラインの予約・決済は可能となった。インフォクルー立ち上げ時と比べて、かなり緩和され、これ自体は結構なことだと思うが、そうであれば、旅行各社に運輸省は通知すべきで、会社個々に違うというのは平等性を欠く気がする。折しも、五月一九日は通産省が定めた「インターネットサーフデイ」だ。この日、通産省は昨年に引き続き、インターネット通信販売業者約一五〇〇社のうち約一〇〇〇社に対して、ホームページ上の表示が「訪問販売等に関する法律」上の表示義務を遵守していないとして、警告メールを送信し、必要な措置を取るよう注意を呼びかけた。通産省の認可団体である社団法人日本通信販売協会(JADMA)は「訪販法」に則ってインターネット・ショッピングの「ガイドライン」を策定している。それでも七〇%近くが表示義務を怠っているのだ。旅行関連商品のインターネット販売が加速度的に伸びることは論を待たない。運輸省・日本旅行業協会(JATA)は早急にガイドラインをつくる必要があると考える。(石原)

近ツーの巻き返し(1999年5月24日号)

 運輸省観光部がまとめた主要旅行業者五〇社の九八年度(九八年四月〜九九年三月)の旅行取扱状況速報をみると、旅行会社間で大きく明暗を分けた。とくに、海外旅行は景気低迷を反映して取扱額が前年度比六・一%もダウンし、各社ともマイナスになっても良さそうだが、やはり業績の良し悪しが出てくる。毎月の結果で予想はつくものの、年度を通して数字で見せられると非情なものである。海外旅行の取扱額に限ると、阪急交通社は日本旅行を抜いて三位になった。阪急の場合、国内旅行の取扱額が日本旅行の半分以下のため合計では依然四位だが、海外旅行の伸びはとどまることを知らず、二位の近畿日本ツーリストの背中が見えている。事実、三月だけでみると、海外旅行の取扱額は近ツーを抜き二位になった。単月で阪急が近ツーを抜いたのは初めてのことだ。さらに言うと、三月の阪急の海外旅行取扱額二二五億円はJTBのそれの半分を超えており、その躍進ぶりは目を見張るものがある。阪急の前年比の伸び率に対して、JTBと比べれば分母が違うという意見もあるが、単月とはいえ2:1の比率を超えれば無視できない数字だと思う。もちろん、JTBグループと比較すれば話は変わってくるが。しかし、近ツーも日本旅行も四月以降は復調の兆しをみせており、ゴールデンウィークは各社とも好調、夏場も低価格戦略で巻き返しを図っている。「今年はホールセールは量から質の時代に転換する」というのは業界全体から見れば、実に喜ばしいことだが、取り扱いシェアがダウンし、順位が下がることは上場企業なら株価に影響するし、社員の士気は益々低下する。長い間トップの座に君臨したキリンビールがアサヒビールの後塵を拝し、「やられたらやりかえす」戦略に転じたのもそうした影響を配慮してのことと思う。企業の生き残りはきれいごとではないわけで、負けたら終わりである。近ツーは大リストラを断行した。後は取扱額増・シェア奪還を目指すだけだ。(石原)

成田空港とW杯(1999年5月17日号)

 「成田空港の平行滑走路の二〇〇〇年度完成はあきらめざるをえない」――運輸省と新東京国際空港公団は一〇日に遂に苦渋の決断を下した。これまで、「話し合いによる解決」を目指して、シンポジウム、円卓会議を開催し、「地元との共生」を旗印に用地交渉を進めてきたが、残る地権者の拒否の姿勢は固く、現行の計画を事実上断念した。成田空港の早期完成を求めているのは地元だけではない。東京、千葉、神奈川、埼玉など首都圏全域の市民の大多数が成田空港の利便性が向上する平行滑走路の完成を望んでいるはずである。それほどの重要な問題なのに、まるでローカル空港のように「地元」に少なからず限定されたことが非常に残念だ。運輸省とNAAはこれまで成田空港の重要性を内外にアピールしてきたが、総意になり得たとは言い難い。とくに、羽田の国際空港化の動きは、「成田空港が現状のままでも羽田を国際空港にすればいい」というムードを創り出した。確かに「ボタンの掛け違い」により成田空港は不幸な歴史を背負っているが、その反省のもとにシンポジウム、円卓会議を開催したはずで、その結果、用地買収に応じた地権者もいる。「絶対に話し合いに応じない」という地権者がいる限り、滑走路をずらして暫定的に整備するのは仕方がないと思が、二〇〇二年W杯開催までと目標を立てるのは意味がない。W杯観戦のために五〇万人が日本を訪れ、その大半が成田空港を利用するというが、日本開催一〇都市のうち関東地区は横浜、浦和、鹿嶋の三都市だけである。他の会場はそれぞれ三千m級の滑走路を持つ空港が地元(静岡は名古屋空港が近い)にある。メイン会場を横浜と浦和が争っているが、それならメイン会場を大阪・長居にすればいい。その方が関空の利用者も増加する。チャーター便を利用し、日本に来るW杯観戦旅行者を分散させた方が、運輸省が進めるウェルカムプラン推進のためのW杯活用に適っている。首都圏にこだわる必要はない。(石原)

eトラベル(1999年5月3/10日号)

 四月一九日号の潮流でインターネットによる旅行商品販売に関して書いたが、JTB(日本交通公社)に続いてジャルパックも遂に、五月一七日からインターネット上で航空券、ホテル宿泊券、旅行商品のオンライン予約・決済ウェブサイト「eトラベル」を起ち上げる。これまで、ジャルパックは「純ホールセラーであり、代理店セールスに徹する」という立場を堅持していたが、「新しいマーケットニーズに対応する」として、インターネット上での一般消費者向けの直販に踏み切ることになった。ただ、ジャルパックは代理店向けの「旅ポン」は併行して展開し、代理店向けと直販の二本立てで進めていくことを強調している。ジャルパックはインターネットによる直販化を決断した背景に市場動向もさることながら、JTBを意識したことを否定していない。「インフォクルー」をみても、JTBがこの分野で先行していることは明らかで、「ぴあ」との提携や自社データベース「ヒマラヤシステム」の開発など来るべきインターネット上のデジタルコンテンツ構築に向けて矢継ぎ早に施策を打ち出している。ジャルパックh「eトラベル」起ち上げに当たり、JTBの「インフォクルー」をかなり研究しているとみた。両社の最大の違いとして、ジャルパックは他社のホールセール商品の囲い込みを狙っており、ジャルパック、アジア旅行開発以外のホールセール商品として「ホリデイ」の名を挙げている。これが実現すれば、インターネット上で「JTB対ジャルパック・ホリデイ連合」が展開されるが、近畿日本ツーリストもインターネットではイントラネットを含めて社内外のシステム構築を進めているものの、双方がネット上で商品を提供し合うことは興味深い試みと思う。HISも現状ではインターネット上で格安商品の情報提供に留まっているが、いずれは他社の動向を見てオンライン決済に踏み込んでこよう。ジャルパックの「eトラベル」サービス開始は、インターネットを舞台にした販売競争に拍車を掛けるとともにインターネット需要を拡大するだろう。(石原)



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