-毎週月曜日発行-
1999年6月

潮流

企画の時代(1999年6月28日号)

 今年の年頭所感で日本旅行業協会(JATA)の松橋会長が「今年は『量』から『質』の時代」という趣旨のことを述べられていたが、本紙のサイパン特集を読んでもそれを実感する。低価格を求めるニーズは依然として残るが、あるホールセラーによると、昨年の半分程度だという。ある程度の上積みでホテルのグレードがアップするならそちらの方を選択するニーズが高まっている。旅行商品も最低価格商品よりもその上の商品に旅客が集まっている。そうなると、旅行会社の企画が問われてくるわけで、業界にとっては明るい兆しといえよう。実際のところはまだ見えない部分もあるが、経済企画庁も日本経済の回復を表明し、世間一般も昨年と比べたら全体に回復基調にあることは事実だ。旅行の場合、経済の回復にすぐに連動せず、一年後ぐらいに本格的に上向いてくるとよく言われる。しかし、そのタイムラグは早まっているように思う。これだけ、情報社会が進むと、どの業界も経済の動きに非情に敏感に反応する。航空業界がまさしくそれで、関空からの国際線に見られるようにイールドが悪ければすぐに減便・撤退する。言い替えれば、需要が上向けばすぐに増便・参入するわけで、供給席数が需要にすぐに連動するようになってきた。供給に合わせて旅行商品を造成する旅行会社から見れば、もう少し我慢してほしいところだが、外国航空会社だけでなく、国内航空会社も来年からは路線の参入・撤退が自由になるので、この傾向はさらに強まっていくだろう。今、一番我慢しているのは旅行会社かもしれない。昨年の厳しい時期は数年経って振り返ると「忍耐の時期」と呼ばれたりするかもしれない。全体が厳しい状況にあって、取扱額を伸ばした会社は団体部門を半ば切り捨てたところがあった。これを耐え忍んだ会社は団体部門が上向くときに生きてくる。「もし団体旅行が復活しても組織も人もいない」と危惧する声も聞く。ちょっと楽観的かもしれないが、少し「企画の時代」が見えてきた。(石原)

まるちゃん旅に出る(1999年6月21日号)

 日本旅行業協会(JATA)が実施する旅行需要喚起策のキャンペーンキャラクターに「ちびまる子ちゃん」が採用された。どんな有名タレントやアイドルよりも「ちびまる子ちゃん」は旅行需要喚起にぴったりだと思う。「まるちゃん」ほど旅行好きの女の子はいないからだ。原作者のさくらももこさんが旅好きだということが反映されていると思うが、漫画「ちびまる子ちゃん」には旅のエッセンスがふんだんに盛り込まれている。小学校三年生だが、地元清水だけではあきたらず、静岡の町へ一人で出かけたり、「父ひろし」の危ない運転で横浜にドライブに行ってひどい目にあったり、憧れていたお姉さんが北海道へ嫁いで牧場に夢を馳せたり、浅草へ行ってまだ無名の「ビートたけし」に出会ったり、果てはインドにまで行ってしまう。冒険好きのどこにでもいる普通の女の子の「まるちゃん」は、日本の子供達に代わって日本中や世界中(とくに夢の中で)を旅してくれる。それでいて、根っこには「清水」という地元への郷土愛がある。だからこそ、「まるちゃん」は安心して旅に出かけるのだ。JATAは「ちびまる子ちゃん」を利用したロゴを作成し、会員各社はこれをパンフレットに貼るほか、店頭にもキャンペーンシールが配布される。今週からのキャンペーン展開で、一般紙だけでなくインターネット「ヤフー・ジャパン」にバナー広告を掲載する。さらに、秋には交通広告にも「まるちゃん」がお目見えし、JATAは会員一丸となって「まるちゃん」で需要喚起をめざすという。漫画「ちびまる子ちゃん」には酒浸りの「父ひろし」に「まるちゃん」がどこかに連れてってとせがむシーンがよく登場する。それに祖父友蔵はじめ家族中が加勢する。これは、日本中の家庭で日常見られる光景だろう。町に「まるちゃん」が溢れた時、日本中の「父ひろし」が「しょうがないから家族を連れて旅行に行くか」と重い御輿を上げてくれれば、キャンペーンは大成功だ。(石原)

旅行会社の再編(1999年6月7日号)

 今から一〇年以上前、当時関連事業本部長だった普勝清治全日空前社長に、全日空系列の旅行会社をどうするか聞いたことがある。その時、普勝さんは全日空商事の中にある国内旅行部門のスカイホリデーを別会社にするとともに、全日空ワールドと統合させたいということを述べていた。当時は当然右肩上がりで、全日空も国際線展開が華やかで、順調に伸びていた頃だ。今回の全日空の中期計画発表で、系列旅行会社の再編の話を聞いて、その時のことを思い出した。後発の日本エアシステムが先に、旅行部門をJAS商事、トレード部門をJASトレーディングに分離したことを考えても、好不況にかかわらず、旅行部門の分離独立は全日空の長年の検討課題だったわけだ。全日空は「将来構想」と言いつつも、今回はワールドとスカイホリデーの統合を明言している。さらに、その上に、「グループ販売センター」を置いて統括し、これはいずれ旅行会社の持株会社に形を変えるという。全日空はグループ全体の再編の一環として旅行部門の分離・統合を位置づけているが、その一方で業界再編の中で、系列旅行会社を生き残らせるためにもこの方法を最善と考えているようだ。全日空の発表前に既に中期計画を明らかにした日本航空も、本体の販売部門、ジャルパック、ジャルストーリー、JAL系ツアーオペレーター、ジャパンツアーシステムなどの旅行部門の再編を検討している。電鉄系だけでなく航空会社系列の旅行部門も「淘汰の時代」に生き残りに向けて具体策を打ち出してきたと言える。そうした中で、ジャルパックは既にJALだけでなく他の航空会社を使った旅行商品の販売に力を注いでいるが、全日空も今後はグループとしての求心力を強めながらも、総合旅行会社としてワールドの一人立ちを求めていくものとみられる。とくに、国際線の不採算路線を打ち出し、ビジネス路線に特化していく全日空にとって、全日空ワールドをインハウスに限定することは無理がある。全日空ワールドは今後、ジャルパック同様に他社の路線を使った旅行商品を造成する方向に進むのではないか。(石原)



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