-毎週月曜日発行-
1999年7月

潮流

「女とばくち」が観光か(1999年7月26日号)

 熊本の県会議員の方が議会で「女とばくちがなければ観光地じゃない」という意味のことを言ったそうで、物議をかもしている。「女」は「買春」とほぼ同義語で使っているのだから、「男女平等」の時代にこれは問題になって当然だろう。この県会議員の方は以前高校野球の監督をやっていて高校野球が盛んな地元では大変な名士である。それを経て県会議員となった「公人」がこうしたことを言うのだから始末が悪い。テレビでこの方のコメントを聞いたが全く悪びれた様子もなく、むしろ「本音を言って何が悪い」と言った感じだった。一番残念だったのは、この件に関する識者のコメントで「ちょっと口が滑った」「発言には気をつけよう」と言ったニュアンスで、「観光」に対しては、これを是認するような言い方もあった。国会議員がラスベガスでばくちで借金を抱えたことも昔あったし、「みんなやってる」では困る。本当に21世紀が観光産業の時代というなら、観光に対するこうした認識を改めることから始めなければならないと思う。日本の観光地の旅館が法人の慰安旅行を当て込んで、「温泉・女・ばくち」で息詰まっていることをこの方はご存じないのだろうか。景気が回復しても昔の団体旅行は戻ってこない。外国人に魅力的な観光地をつくるために推進している「ウエルカムプラン21」も地元の意識がこれではなかなか大変である。一方、海外旅行では以前「買春ツアー」が問題視されて以来、沈静化しているようだが、実態はどうなのか。若い人はともかく、五〇代以上の人にはこうした「ニーズ」はまだあるようで、現地でツアーコンダクターが苦慮している様子が目に浮かぶ。声高に「恥」とか「道徳」とか言うつもりはないが、旅行形態が変化している中で、何をやるにも「自己責任」の時代に、「自分の世話ぐらいは自分でやれ」というのが正直なところだ。(石原)

奥の深い香港(1999年7月12日号)

 チェク・ラップ・コック空港が開港してから一年、香港に取材で行って来た。新空港は初めてだが、広さ、明るさ、わかりやすさ、申し分ないと思う。制限区域も見て回ったが、旅行者から見て実に分かりやすい空港という印象を受けた。空港から市街地まで遠いという声もあるが、旧空港が近すぎたからで、アクセス的にも全く問題はない。空港は素晴らしいが、問題は香港にある。円高時はショッピングの魅力があったが、今はその魅力が薄れた。これは、どこの観光地も同じだが、ショッピングだけで旅行者を呼ぶのは難しいと実感する。食事はどうか。これも中国が開放政策で観光に力を入れ、日中航空交渉により多くの都市に日本から直行便が就航したことで、専売特許ではなくなった。日本人観光客回復のために、香港観光協会(HKTA)は努力を続けている。昨年と比べれば日本人観光客は回復に向かいつつあるが、それでも厳しい状況に変わりない。香港のイメージを強烈に印象づける映画に「甲殻機動隊」がある。SFアニメーションの傑作として海外でも評価の高い作品だが、ここに登場する未来都市、香港を今の香港とダブらせる人も多い。確かに香港には「電脳都市」としての顔がある。それだけエネルギッシュということで、香港の街を日夜歩くと神経が高ぶる。これは観光としてはとても重要な要素だと思う。半面、旅行会社に香港の「田舎」に行きたいと言ったら怪訝な顔をされた。いくら、大都市「香港」と言っても地方はあり、素朴な風景をみたり、人情に触れてみたいとも思う。一日のんびりと香港のひなびた漁村を見たいが、そういうニーズは少ないという。車で走ると香港の「田舎」もなかなかいい。最近は、エコブームで、香港も「ピンクドルフィン」という新しい観光素材も出てきた。ディズニーランドもいずれは着工するとみられる。こうした新しいものは必要だし、ぜひとも成功してほしいと期待する。だが、「新宿」と「千葉の漁村」が背中合わせになっているような今の香港も実に味わい深い。(石原)

修学旅行カルテル(1999年7月5日号)

 公正取引委員会がJTBなど大手旅行会社九社に対して、大阪府の公立高校が実施する修学旅行で価格カルテルを結んでいたとして、独禁法違反で排除勧告を行った。これを受けて、九社は二八日に応諾し、審決(勧告審決)するのが事実上確定した。九社は今回の勧告を「真摯に受け止め、公正な取引に努める」とのコメントを発表しているが、実に重い勧告である。修学旅行が大手旅行会社で「独占していた」と認定されたことになる。九社にも言い分はある。修学旅行は通常の団体旅行と違い、人数も多いし、手配も相当前から行わなければならない。これまで蓄積したノウハウが必要であることも事実だろう。それでは、今回の勧告を教訓とするなら、今後修学旅行についてどのような入札が望ましいのだろうか。一番すっきるするのは、各旅行会社が修学旅行担当者に対して、修学旅行の企画をプレゼンして、その中から担当者が選定して決めることである。それができなかったのはなぜか。「修学旅行」という日本独特の「慣行」が日本の業界のこれまでの「風習」ともいうべき「談合」体質を育んできたからに他ならない。建設業しかり、土木業しかり、旅行業も修学旅行に関しては同じ体質だったということだ。「談合」には「癒着」がつきものだ。業者の「談合」とともに担当者との「癒着」の構造だってある。今回は表に出てないので、修学旅行に関してはないらしい。担当者は教育者だから、まさか日本の教育の権威が失墜してしまうようなことはしないだろう。今回の大阪での勧告が氷山の一角であるかどうかは知らない。ただ、公取委は今回の勧告で、「二度とやるな」と警告しているわけで、二度目は刑事処分も辞さないだろう。数年後には国・公立高校の海外修学旅行が解禁になるという。旅行会社と修学旅行担当者は「談合」も「癒着」もない「企画」で決める修学旅行を造らなければならない。(石原)



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