データ共用化(99年12月20日号)
日本人ほど言葉に踊らされる人種はいないのではないか。もうほとんど死語になっているが、ニューメディア、マルチメディア、高度情報産業と言った言葉が氾濫した時代もあった。ITなんて、旅行業界ではインクルーシブ・ツアー以外になく、インフォメーション・テクノロジーの方が幅を利かすとは正に時代を感じる。経済紙が煽るITに別にけちを付けるつもりは全くないが、またぞろ言葉が一人歩きし、その尻馬に乗る人がいるのが一番困る。インターネットは人任せにしてはいけない。自分でやることが大事なのだ。中小の旅行会社にとって大手と伍して戦える武器はこれまでなかった。でも、インターネットは世界に開かれた営業所を持つことで、自信のある商品を持ってさえいれば、それで勝負することができる。先週も始めに商品ありきと書いた。もう、人任せにする時代は終わりを告げた。本当に質を問いたければ、インターネットで世に問えばいい。だめなら、ネットの藻屑と消える。これまで、インターネットで質の良い旅行商品で成功した例を私は知らない。格安航空券ならいくらでもあるが。比較購買で安ければだれでも買えるし、事実旅行サイトとは名ばかりで、実質採算を取ろうとすれば、格安航空券に目が向くのも仕方がないかもしれない。それがネットの現実だ。JATA旅行情報センターには期待している。この時代にそれが必要かどうかは今は問わない。それはこれから決まることだから。ただ、JATA旅行情報センターだけにすがるようでは、旅行会社としては恥ずかしいことではないか。仮にもプロなら、情報センターはあくまで基礎的データベースの共用と割り切るべきで、それ以上のデータベースを自社で構築しなければ生き残れない。データベースはソフト産業の旅行会社にとって最大の財産であり、基礎的データでもそれが共有できる意義は大きい。JATA旅行情報センターは、個々の旅行会社がデータベースを構築するするための共有財産として重要な意味をもつだろう。(石原)
始めに商品あり(99年12月13日号)
先のJATAコングレスは時代の流れか、インターネットを旅行業界にどのように取り込んでいくかが議題としてとり上げられた。既に、旅行・航空業界でも新しい流通チャネルとして、インターネットによる旅行商品や航空券の販売が展開されており、その意味では一歩踏み込んだものといえる。わが国の場合、インターネットの普及度が米国より五年ほど遅れていると言われているが、今の加速度なら数年後には追いつくとと思われる。ただ、インターネットを商売に結び付けることは、普及すればするほど難しくなる。経済誌などが「インターネットに乗り遅れるとビジネスチャンスを失う」と煽るため、どこの会社もネットビジネスを計画もしくは実行しているが、そうは甘くない。成功例は表に出るが、失敗例はなかなか出てこない。初期にショッピングモールを展開し、消えていった例は大手から中小までいくつもある。経営者の中には「時代はインターネットだ。これで商売しよう」と半ば盲目的に参入しようとする人もいる。どんな商売でもそうだろうが、はじめに商品ありきで、優れた商品企画力がなくては、インターネットだろうと何だろうと、成功は難しい。世界に開かれた販売チャネルとしてのインターネットは魅力だが、それも商品あってこそで、そこを見誤ると必ず失敗する。日本IBMの岡本明雄氏は「インターネットが万能という意識は間違っており、新しい流通チャネルが加わるだけだ」と喝破する。ただ、インターネットは「専門知識の橋」であり、「この橋を渡って成長企業へと変革していく必要性がある」と指摘する。インターネットを流通チャネルとしてモノにするためには、経営者がインターネットを熟知しなくてはならない。そうでないと、この「怪物」に会社全体が踊らされることになる。インターネットはメーカーとエンドユーザーを直結させる。直販化の進行は中間業者を厳しい立場に追いやることになるが、優れた商品をインターネットで世に送ることができれば、成功は可能だろう。来年こそ、新しい商品で勝負する年だ。(石原)
新時代への挑戦(99年12月6日号)
旅行会社と航空会社の健全な関係とは、どういう関係をいうのだろうか。パッケージツアー華やかなりし頃は、海外旅行について言えば、大手航空会社の社長自ら「旅行代理店がパッケージを造成してくれるからこそ国際線が維持運営できる」と言う話を良く聞いた。その頃は、旅行業界だけでなく、どこの業界でも商慣習としてのキックバックは当たり前だったから、それほど問題視されることもなかった。しかし、格安航空券の存在が半ば公然化し、航空券の低価格化、FIT指向の流れの中で、旅行会社と航空会社の関係は大きく変わった。厳しい見方をする人は「航空会社のスタンスは昔もいまも変わらない。以前は仕方がないから旅行会社の力を借りていただけで、今は頼らなくても航空券が売れるから本音が出てるだけ」と言う。もちろん、航空会社によって旅行会社へのスタンスは違うし、変わらぬコミッションで良好な関係を保つという明言する航空会社もある。ただ、年を経て直販化に対する比重が高まっていることは事実だし、「共存共栄」とは言い難い動きがあることも否定できない。大手ならまだしも、中小の旅行会社は特定の航空会社の系列に与していかないと、ますます厳しくなりそうだ。航空会社の置かれた今の立場を考えると、それも理解できないわけではない。記録的な特別損失を出し、資本準備金を取り崩した中で、オープンスカイを目の前にして生き残ることは容易でない。体制を変えて効率的な運営をしないと、生き残ることすら難しい。航空会社が体制を変革していく中で、当然、旅行会社との関係も変わっていく。一方だけが変わって、片方が現状維持ではきしみを増幅するだけだろう。本稿が出るころにはJATAコングレスは終わっているが、この機会に旅行業界はどう変わるべきかを本音で討論することが重要だ。「JATA99」のメインテーマ、「新たなる時代、新たなる挑戦」への議論は今から始まる。旅行産業の大枠の中で、利害をぶつけ合う議論の高まりを期待したい。(石原) |