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中国雲南省の旅−その多彩な観光資源の魅力を探る
 −香格里拉(シャングリラ)・東南部を訪れて−

 中国の西南部に位置する雲南省は、日本からの直行便もあり、世界遺産である麗江を筆頭に、日本人にとって人気のある観光地のひとつである。特に由緒ある歴史と少数民族の風情を楽しむ昆明→大理→麗江の「ゴールデン・ルート」は、もはや中国旅行商品の定番とも言っていいだろう。今回は、そんな雲南省で新しい観光地として日本でも注目され始めているチベット族の住む香格里拉(旧名:中甸)やベトナム国境へ向かう東南部へのルートを取材してみた。いずれのエリアも、今後の旅行商品化が大いに期待できる地域。バリエーション豊かな雲南省の魅力を感じさせるエリアでもある。【協力:中国国家観光局・雲南省旅游局・雲南省中国旅行社・日本エアシステム、取材・文章:宮原夏樹 記者】



西北ルート、桃源郷「シャングリラ」へ向かう

 雲南省で唯一の世界遺産である麗江を訪れ、桃源郷「シャングリラ」のモデルといわれる香格里拉へ向かうルートは、麗江のナシ族と香格里拉のチベット族という2つの少数民族の風情を楽しむだけではなく、いにしえの歴史や雄大な自然風景を体験できるルートでもある。なお、7-8月は比較的雨の多い時期に入り、山が雲に隠れがちで、雄大な自然風景を楽しむ機会が少なくなる。香格里拉周辺の高山植物の花が咲き乱れる5-6月のシーズンがベストシーズンと言えよう。



麗江 ― 日本人に最も人気ある観光地、ゆったり日程がお勧め

 麗江は雲南省西北部に位置、昆明からは飛行機で約40分のところにある。旧市街「古城大研鎮」は800年以上の歴史を誇り、現在世界遺産に指定されている。日本の古い町並みを思わせる家並みは、日本人観光客の人気が高く、麗江は日本人にとって雲南省で最も人気のある観光地だ。日本人は年間2万人程度が訪れる。
 麗江の観光局では、この旧市街の観光地整備に積極的に取り組んでいる。1996年の地震で崩壊した建物をかつての姿そのままに復元、旧市街の雰囲気を壊さないで整備を行ったのは、特筆に値する。また今年から旧市街の中心地「四方街」にあった自由市場を廃止、旧市街の中心に広々とした空間が生まれた。
 麗江を訪れるなら、是非ともゆったりとした日程を取ることを勧めたい。特に旧市街は、そぞろ歩きが一番楽しい。旧市街内は土産物屋が軒を連ね、麗江に住む少数民族ナシ族が使っていたトンパ文字をあしらったTシャツをはじめ、その他ナシ族風の雑貨が売られている。自分の名前をトンパ文字で彫るはんこも麗江ならではのお土産だ。また水路そばのカフェでゆったりと時を過ごすのもいい。郊外の観光と組み合わせ、1日でいろいろ詰め込むのではなく、旧市街の観光は少なくとも半日は割いておきたい。最近のパッケージツアーの中には、麗江に3日以上滞在するゆったり滞在プランやフリータイム設定にするプランなど、バリエーションが増えており、初めて訪れる人だけではなく、リピーター向けにも適した商品構成になっている。



麗江→香格里拉、長江源流の「爆流」などが見どころ

 麗江から香格里拉へは車で約4時間の道のりとなる。途中、長江(揚子江)上流の金沙江が大きく湾曲する長江第一湾や虎跳峡などの見所があり、これら立ち寄りながら丸一日の行程となる。虎跳峡は金沙江の川幅が最も狭いところにあり、急流ならぬ「爆流」が見られる。特に夏は雨量が多い時期になるので、その勢いはすさまじい。長江第一湾や虎跳峡を訪れ、山道を過ぎると、香格里拉のある高原地帯に入る。標高は3000メートルを超え、この一帯にはチベット族が多く住む。どっしりとした特徴のある家々と草原が続き、まさにここはシャングリラ(桃源郷)と感じる風景が続く。麗江から香格里拉への道路状況だが、麗江・香格里拉周辺はかなり整備されているが、山道に入ると一部状況の悪いところがある。雨の多い夏期は多少時間がかかる場合があるだろう。雲南省旅游局では、道路状況改善に向けた取り組みを関係自治体に向けて積極的に働きかける方針だ。



香格里拉 ― 観光開発進む「シャングリラ」、雄大な自然風景とチベット族の生活

 今年5月に中甸から改名したばかりの香格里拉(シャングリラ)は、ジェームス・ヒルトンの小説「失われた地平線」で描かれた「シャングリラ(桃源郷)」のモデルだと言われている。この地域の風景が小説の中の記述とほぼ一致することや、中甸を表す古チベット語の意味がシャングリラの意味と同様なことなどがその由来。昨年末に中国政府より認可が下り、今年5月より正式に香格里拉となった。日本人観光客は年間で約4000人程度が訪れる。日本人にとってまだまだ未開発の観光地だと言えよう。
 香格里拉の中心は近代的な街で、4つ星ホテルが現在3軒ある。観光はここを拠点に郊外の観光ポイントを周ることとなる。街には市場があり、チベット族が食べるチーズなど、ここならではのものが売られていて面白い。さらに香格里拉は松茸の産地としても有名で、専用の松茸市場もある。ホテルのレストランでは、松茸料理も出てくるので、日本人観光客には魅力のひとつとなるだろう。
 香格里拉の観光地としてまず挙げられるのは、松賛林寺だ。街の中心から北へ約5キロ、雲南省のチベット仏教(ラマ教)寺院の中で最大規模を誇る。寺院を中心に僧侶の住居が集まっている。また、松賛林寺からさらに北へ進むと伊拉高原と納巾白海がある。夏の雨の多いシーズンには沼、冬の雨の少ないシーズンには草原となる場所で、チベット族の放牧の様子を見ることができる。 街から東へ約36キロのところに位置するのが属都海。海のないこのエリアでは湖を「海」と呼ぶことが多く、高原植物と森林、そして湖が織り成す風景はまさに神秘的な桃源郷の世界だ。また東へ進むと碧塔海と呼ばれる同じく風光明媚な場所がある。
 さらに現地旅行社では、チベット族の家庭を訪問するプログラムを用意している。伝統的なチベット族家屋を訪問、主食の炒った麦の粉(チャンバ)やバター茶、ヤクのチーズやヨーグルトを味わうことが出来る。決して日本人向けの味ではないが、チベット族の生活様式を知る貴重な機会となるだろう。
 香格里拉エリアは標高3200-3500メートルで、かなりの高地となる。人によっては高山病にかかる恐れもある。現在、昆明から香格里拉へは毎日1-2便の航空便があり、所要時間は50分程度と簡単に行くことが出来る。しかし標高1800メートルの昆明から一気に飛行機で行くよりも、麗江(標高:2300メートル程度)に立ち寄って陸路でアクセスした方が、高地に慣れ高山病の症状が出にくい。帰路での飛行機の使用が一番だ。



さらに奥地、徳欽へ−今後の観光基盤整備に期待

 香格里拉からさらに西北へ車で7時間程度行った所にあるのが徳欽だ。雲南省最高峰である梅里雪山(6740メートル)が聳え立つ風景はまさにダイナミック。徳欽には、チベット仏教寺院以外にも、キリスト教の寺院などがあり、「失われた地平線」の小説の中にある「多種の宗教が並存しながら、互いに受け入れ合い、他民族が仲良く結びつき合う」シャングリラの姿がそこにある。徳欽を組み入れたツアー商品はまだほとんどない。ホテル設備がまた不十分なこと(現在約100室程度)や香格里拉からの道路がまだ十分に整備されていないのがその理由だ。だが今後整備が進むに従って、新しい観光地となる潜在性は高いと言えよう。



東南ルート、田園風景を見ながらベトナムへ向かう

 これまで大理や麗江、シーサンパンナなどが主な観光地として知られていた雲南省だが、東南部の観光地はあまり知られていない。だが、世界遺産として現在申請中の元陽の段々畑は世界随一の規模を誇る。また東南部はベトナムと国境を接しており、ベトナム北部との組み合わせも可能。雲南省旅游局の張先安副局長は、「今後は東南部にある元陽の段々畑などを日本人に宣伝していきたい」と述べており、今後の観光需要促進に向け、東南部の開発に積極的に取り組んでいく考えを示している。



神秘的な湖を経て、通海へ-取り残されたモンゴル族が住む

 昆明から車で約2時間強のところにあるのが通海だ。通海の集落のひとつに興蒙という集落があり、そこにフビライ・ハーンの末裔であるモンゴル族が住んでいる。モンゴル族のフビライ・ハーンが率いる元が当時雲南省にあった大理国を占領、その時にここ通海近郊に駐屯地が置かれ、元が滅びた後でも、何人かの人はこの地にそのまま留まり、生活し続けたのがここのモンゴル族だ。遊牧生活から農耕生活に転じ、民族衣装も大きく変化したが、フビライ・ハーンを祀る「三聖堂」など、モンゴルの雰囲気が呼び起こされるものも残っている。長い距離を辿って来たその姿はちょっとしたロマンを感じさせるところであり、立ち寄る価値があるだろう。
 通海へは、昆明から途中の玉渓までは高速道路が走り、道路状況はかなりよい。また中国でも2番目の深さを誇る撫仙湖や星雲湖、杞麓湖を眺めながら通海へ向うのもいい。湖では、白魚(中国名は銀魚)の養殖が行われており、白魚の天ぷらが名物だ。また撫仙湖のほとりには、ジャガイモ入りのご飯や白菜と里芋のスープを出すレストランがあり、日本人好みの素朴でやさしい味が楽しめる。また通海に隣接する江川には、中国でも十大考古学発掘地に数えられる李家山で出土した春秋戦国〜前漢時代の青銅器を集める博物館がある。紀元前の時代に栄えた青銅器文化の遺産を間近に見ることが出来るところだ。



建水、古の中国を感じる「建築博物館」−進むホテル整備、中国伝統家屋風のホテルも

 建水は通海からバスで2時間のところにある。ここは漢民族の伝統が感じられる場所で、1200年余の歴史を誇る。中国では「古城」のひとつとして称され、明・清時代の古い建物が残るまさに「建築博物館」である。山東省曲阜の孔子廟に次ぐ規模の文廟(孔子廟)や双龍橋、朱家花園や朝陽楼などが主な観光ポイントだ。
 これまで建水を訪れるツアーは、一部の旅行会社で昆明発の2-3日のオプショナル・プランとして盛り込まれていたが、当時建水の宿泊施設がまだ不十分だったため、現在取りやめになっているところが多い。しかしホテルの整備状況はかなり良くなってきており、朱家花園の一部を3つ星ホテルにするなど、中国伝統家屋に泊まることも可能。「古い町の雰囲気が楽しめる」と人気があっただけに、今後旅行プランに再度取り込む価値はあるだろう。



元陽、世界随一の段々畑−世界遺産申請中、宿泊施設の整備がカギ

 元陽は建水の南に位置する。ここの大きな見どころは世界随一の段々畑。山の頂上から麓までびっしりと占めるその姿はまさに圧巻である。現在、世界遺産の登録を申請しており、認可がおりれば今後注目される観光地となることは間違いない。元陽には少数民族イ族とハニ族が住む。ベトナムにも近いことから、フランス人観光客に人気があり、日本人の写真家も時々訪れる。
 元陽は建水からの日帰りは不可能。元陽で宿泊する必要がある。ただ元陽の宿泊施設はまだ充分ではないのが実情だ。新市街に2つ星ホテル、段々畑に近い旧市街には招待所しかなく、日本人旅行者には必ずしも満足のいく体制が整っていない。今後の宿泊施設整備に期待したい。また元陽では、空港の建設計画も検討されており、実現できればよりアクセスしやすくなるだろう。



陸路でベトナム北部へ−雲南省+ベトナム北部の展開も

 さらに雲南省東南部のルートは、ベトナム北部との組み合わせも可能だ。雲南省側の国境の街は河口。ここから、陸路でベトナムへの入国ができる。昆明―ハノイ間を結ぶ鉄道もここ河口を通る。6月に日本航空(JAL)とベトナム航空(HVN)が成田―ハノイ線を開設。JAS昆明線とJALハノイ線の組み合わせやHVNのハノイ―昆明線の利用など、雲南省+ベトナム北部をめぐるアクセスは充実してきている。今後の観光開発が期待できるエリアと言っていいだろう。



日本人訪問者数ほぼ横ばい、より多彩な旅行商品開発の必要

 中国へ訪れる日本人訪問者数は、今年も順調に伸び続けている。今年1-6月で、昨年同期比12.3%増の130万人以上を記録。かねてより目標にしていた年間250万人突破はほぼ確実だ。しかし雲南省に限ってみると、状況がいささか異なる。昆明で世界園芸博覧会開催が開催された1999年の14万人をピークに、ここ2-3年は毎年12万人程度を推移するに留まっているのだ。今年は「1-6月で8万人」(雲南省旅游局)とのことだが、昨年の状況とほぼ変わらないという。特に今年は、日本エアシステム(JAS)が関空―昆明線を、首都圏需要が大きく見込める成田発にシフトしたが、ロードファクターで5割程度と伸び悩んでおり、期待以上には利用客が伸びていない。積極的な告知も必要だろう。
 雲南省へ訪れる日本人が伸び悩む背景には、まず直行便の少なさが挙げられるだろう。今年4月に就航した雲南省のお隣四川省への初の直行便となる成田―成都線は現在週4便。冬期スケジュールからは週5便となる。一方、成田―昆明線は週2便で、旅行商品の日程設定が限定されてしまう。広州や上海などの乗り継ぎ便利用の商品も出ているが、やはり直行便利用の利便性は高い。地元の中国雲南航空では、関空―昆明線就航の検討をしているようだが、具体化までには至っていない。
 また、4月の成田―成都線就航に伴い、九寨溝をはじめとする四川省の世界遺産巡りの旅が人気を集め、観光需要が四川省にシフトしていることも挙げられる。成田―成都線のロードファクターは8割以上を超える好調さを示しており、昆明線とは対照的だ。雲南省への人気がほぼ一巡し、観光需要が落ち着いてきたことも理由のひとつとして挙げられるだろう。
 さらなる需要喚起のためには、新しい観光素材の提案が必要だ。今回訪れた香格里拉や東南部エリアは、そうした意味で新しく提案できるデスティネーション。新しい観光地を取り入れ、よりバラエティー豊かな旅行商品を用意する必要がある。また前述の麗江でのゆったり滞在プランやフリープランなどのような、リピーターを意識した商品もこれからはより充実させるべきだ。さらにベトナムやタイなど、近隣国と絡めた商品も考えられるだろう。多彩な旅行商品開発で、新しい雲南省の魅力をアピールすることが、今後の需要促進のカギとなることは間違いない。



雲南省のゲートウェイ−省都昆明

 雲南省の省都である昆明は、日本からの直行便があり、雲南省観光の起点となる都市である。世界遺産として申請中の石林をはじめとする観光地も数多い。石林へは現在高速道路の建設工事が進められており、来年末の完成後には昆明―石林間はわずか車で1時間程度に短縮される予定(現在約2時間強)。また、街の中心部にある花鳥市場は、文字通り花や鳥、金魚や犬猫などのペット動物を扱う市場。少数民族の伝統模様をあしらったバッグなどお土産も売られている。ちょっとしたフリータイムに街の活気が味わえる場所としてオススメだ。昆明は雲南料理の本場でもある。雲南料理は米で作った麺や肉、野菜をアツアツのスープに入れて食べる名物料理「過橋米線」や松茸をはじめとする豊富なキノコ料理、漢方が入った滋養溢れる味わいの鶏スープ「汽鍋鶏」など、日本人の口に比較的合うものばかりだ。



JASで行く雲南省の旅、4月より成田―昆明線就航

 日本エアシステム(JAS)では、4月の成田空港暫定滑走路供用開始に合わせ、これまで運航していた関空―昆明線を成田発に変更、現在週2便で成田―昆明間を運航している。所要時間は約5時間半、日本から雲南省へ行く最も速い航空便だ。同社では現在、食事やその他サービスがエコノミークラスと同様ながら、ビジネスクラスのシートを利用したユニークなプロダクト「プレミアムクラス」のサービスを提供している。旅行商品でもすでにオプショナルとして取り入れられており、ゆったりとした旅をしたい人向けには、まさにぴったりなプロダクトだと言えよう。また昆明線では、同路線でしか買えないオリジナルCDやポストカードを用意、販売は雲南省の少数民族の民族衣装を着た客室乗務員(写真)が行っている。




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